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【JO直前企画】前回大会女王・青木知枝インタビュー_004

2026.09.19

「1円でもマイナスなら辞める」——人生としてのビリヤード

週6の勤務、3人の育児、そして家事。その過酷な隙間に「10倍の密度」で思考を詰め込み、戦い続ける青木知枝。彼女を突き動かしているのは、単なる勝負への執着ではない。プロとして、一人の人間として、自らの足で立ち続けるという強烈な覚悟だ。最終回となる今回は、彼女が自分自身に課している最も厳しいルールと、2026年ジャパンオープン連覇への想いを訊く。

第1回 5時起床、ダンプ、そしてプロ。「回らない毎日」を愛する理由
第2回 「どっちも諦めない」ための就活と、どん底からの復帰
第3回 「お天道様に顔向けできるか」——身体能力を凌駕する『決め事』

■「1円でもマイナスになった瞬間、辞める気です」

——これまでのお話で、青木プロの強さの正体が「合理性」と「密度の濃さ」にあることがよく分かりました。ただ、このインタビューで最も衝撃的だったのは、ご自身の活動に対する「経済的なシビアさ」です。
青木 ああ、それですね。すごい、ビリヤードに熱いプロの人たちには失礼かもしれないですけど、私、今「1円でもマイナスになった瞬間、ビリヤードを辞める気」なんですよ。

——……1円でも、ですか。プロとしてそこまで言い切るのは、相当な覚悟ですよね。
青木 でも、それが私の現実なんです。1円でも赤字になるなら、子供たちに我慢させてまでプロを続けるメリットがない。そのお金があるなら、子供たちに好きなことをさせてあげた方がいいと思えてしまっているんです。

——まさに「母」としての、そして「プロ」としての究極のリアリズムですね。
青木 例えば、JPBAの会費が月に8,000円。月に一度でも何かのビリヤードのお仕事をいただければ、その会費はペイできる。じゃあ、その間は続けよう。でも、遠征に行くなら、経費を引いてプラスにしなければならない。だからこそ、試合も「マイナスにならないように」死に物狂いで頑張る。需要があって、応援してくれる人がいて、結果が出て、初めて「続けてもいい」という免罪符がもらえる。そう思っているんです。

■「どっちも諦めない」姿を見せる責任

——その崖っぷちの覚悟があるからこそ、あの驚異的な集中力が生まれるわけだ。
青木 でも、本当は「どっちかを諦める」のが当たり前の世界にしたくないんです。仕事を理由にプロを諦めるとか、子供ができたからビリヤードを引退するとか。

——多くの女性プレイヤーが直面し、悩んできた壁ですね。
青木 ある方から言っていただいたお言葉ですが、「あと1年、あと1年頑張ってから(子供を)……って思っていたら、産めなくなっちゃった。だから知枝は良かったんだよ」って仰ってくれて。逆に、子供のために夢を捨てた人もたくさん知っています。

——先人の痛みや後悔も、青木プロは受け止めている。
青木 私は本当にありがたいことに、周りの助けがあって両立できている。だからこそ、私が結果を出すことで「ほら、どっちも諦めなくていいんだよ」っていう前例を示したい。プロじゃなかったら1人目の時に辞めていたかもしれない私を、ここまで繋ぎ止めてくれた世界への恩返しだと思っています。

——「結果を出している人が言う言葉」には、何よりも重みがありますからね。
青木 そうなんです。結果が出ないまま発言するより、多少でも結果を残した上で言う方がみんな聴く耳を持ってくれる。だから、私は勝たなきゃいけない。私の人生、頑張らなきゃいけないんです。

■純粋な「好き」を忘れても、人生という球を「撞く」

——青木プロにとって、今、ビリヤードをすることは「楽しい」ですか?
青木 ぶっちゃけ、「ビリヤードめっちゃ好きだね」って言われても、「好きかなあ……?」って最近は思っちゃうんです(笑)。

——ええっ、そこまで正直に言っちゃいますか(笑)。
青木 もう、好きとか嫌いとかいう次元を超えて、完全に「人生の一部」になっちゃっているんですよ。経済的なことも、家族との時間も、すべて含めて今の生活の「核」になっている。純粋に「好き!」「楽しい!」ってはしゃいでいた感情は、どこかに忘れてきてしまったのかもしれません。

——でも、それは「職業」として、そして「生き方」としてビリヤードと心中している、ということの裏返しでもありますよね。
青木 そうですね。でも、ビリヤードをしている人たちは大好きだし、この世界にいることも好き。その中で自分がどう「自分自身の人生という球を撞くか」。今はもう、それだけですね。

■聖地・ニューピアホールへ。連覇への誓い

——さあ、いよいよ9月20日からジャパンオープン女子の戦いが始まります。ディフェンディングチャンピオンとして、あの舞台に帰るわけですが、どのように戦いますか?
青木 ディフェンディングチャンピオンと言っていただくたびにむず痒くなったり、意識してしまったりはするのですが、いざ試合が始まったらいつも通りだと思います。「負け負けしたくないよぅ…一試合でも多く撞きたいよぅ…」と(笑)。去年優勝したからって一番うまいわけでも、一番強いわけでもないですからね。おごることなく、背負いすぎることもなく、ずっと変わらず向かっていく精神です! ただ、長女はすでに「ジャパンオープン優勝したら〇〇買ってね♡」とおもちゃまで決めているようなので(笑)、叶えられるように最後まで諦めず頑張ります。

——今年も、青木知枝の「人生を懸けた一撃」を、多くのファンが楽しみにしています。
青木 私にかかわってくださるすべての方たちに顔向けできるように、すべての球に妥協せず全力で向かいます! みなさまのお気持ち、お言葉が本当にパワーになります。応援よろしくお願いいたします!!!
(了)

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