【JO直前企画】前回大会女王・青木知枝インタビュー_001
5時起床、ダンプ、そしてプロ。「回らない毎日」を愛する理由
2026年9月19日(土)、今年も『ジャパンオープン(JO)』の季節がやってくる。ディフェンディングチャンピオンとしてこの大舞台に登場するのがJPBA44期生の青木知枝だ。多くのファンは、彼女の華やかな「入れ」と勝負強さに熱狂する。しかし、その舞台裏にあるのは「週6フルタイム勤務の会社員」であり「2児の母」という、およそトップアスリートのイメージからは程遠い、泥臭いまでの日常だ。練習時間ゼロという極限の状況下で、なぜ彼女は「日本一」の称号を手にすることができたのか。まずはその驚くべき生活から、青木知枝の「現在地」を紐解いていこう。
■「回っていない」からこそ、今の自分が一番好き
——早速ですが今回は「プロプレイヤー・青木知枝」を徹底的に深掘りしていこうと思います。今、2人の可愛い娘さんを育てて、家事も仕事もこなして、さらにプロ活動。正直、それってうまく回ってるんですか?
青木回ってないんでしょうね、きっと(笑)。時々高熱出しますから。いや、でも、すごい変な言い方ですけど、子供の頃とか、大昔を除いて、ある程度大人になってからの自分の中で、今の自分が一番好きなんです。
——今の自分が一番好き。それ、なかなか言えることじゃないですよ。
青木ビリヤードを頑張っているかと言われたら、もっともっと練習して頑張っている人たちが周りにいっぱいいて、私なんかがそんなことを言っては失礼だなって思うんです。でも、「人生」に関しては、まあまあ頑張っている自負がある。それが今の自分のアイデンティティというか、芯、もっと言えば「揺るがない核」になってますね。
——人生を頑張っていることが、自分の「核」になっている。
青木はい。自分でも「多分無理してるな」とは思いますけど(笑)。教育費も生活費もかかるし、本当に必死。でも、その「無理」をやり切っていることが自分を支えている感覚なんです。
■週6フルタイム、現場事務、そして3トンダンプを転がす日々
——その「無理」の中身を具体的に聞きたいんですが、一週間の生活サイクルは、今どんな感じなんですか?
青木普通に月曜から土曜までが仕事なんですよ。しかもフルタイム。土曜日も休みじゃないんです。
——週6でフルタイム!? いつ休んでるんですか。お仕事の内容は?
青木運送会社の事務です。でも最近、運送とは関係ない業務も任されるようになって。作業着を着て事務をしている日もあれば、スーツを着て遠方まで営業回りをする日もある。なんなら「青木さん、ちょっとバッテリー売りに行ってきて」とか言われて、3トンダンプを運転して行ったりもするんです。
——え、ダンプの運転まで…… 事務職の域を完全に超えて、もはや「現場のなんでも屋さん」じゃないですか。
青木あはは(笑)そこまでではないですけど。ショベルに乗ったり、ダンプでバッテリー売りに行ったり。そういう雑用もする日もあれば、パソコンで経理関係の仕事をみっちりする日もある。そんな感じで夕方まで働いて、そこから「ママ」に戻るんです。
■朝5時の「キッチンリセット」と覚えのない長男
——仕事が終わったら、そこから第2ラウンド開始ですね。
青木朝は5時に起きて家事を始めます。夜は疲れ果てて子供と一緒に寝落ちしちゃうので、朝に洗濯機を回すところからスタート。私がどんなに夜、キッチンを綺麗に「リセット」して寝ても、朝起きると部屋の中にビールの空き缶やら、アイスのゴミやら、洗い物とかを残してくれる……「覚えのない長男(夫・青木亮二プロ)」がいるので(笑)。
——あはは、その「長男」は手が焼けますね(笑)。
青木その片付けを洗濯機回しながらバーッとして。前日の食器を片付けたり、乾いた衣類をしまったりしつつ、自分の準備をして。7時すぎに旦那と上の子を起こして。ご飯は旦那に任せてますけど、お弁当がいる日は私が作って。朝7時半には家を出て、会社に向かいます。
現在は夫・青木亮二プロと支え合いながら家庭を守り、仕事・プロ生活をこなしている
——そこから夕方までフルタイム。夜はどうしてるんですか。
青木基本は娘の習い事が週2回あって。その習い事がない日、かつ旦那が夜仕事(インストラクター)でいない日以外で、ここ(Link)のプレイヤーデーやレッスンの予約を入れるんです。レッスンに関してはありがたいことに、一斉送信でLINEを送ると、翌々日には全部予約が埋まっちゃいます。レッスンがある日はレッスン、ない日はワンオペで子供たちのこと。夜はもう、何事もなければ早々に寝ます。
■「ビリヤードどこ行った?」練習時間ゼロの衝撃
——今のスケジュール、どこを切り取っても「ビリヤード」が出てこないんですが。自分の練習時間は……?
青木当面ゼロです。ずっとゼロ(笑)。
——……練習ゼロでタイトルを獲ったんですか!?
青木だからもう、キューを握る機会は、月に1回のマンスリー運営の時が唯一、夜中まで撞く日。まあこの時は基本飲んでますけど(笑)。あとはレッスンの時間とプレイヤーデーだけですね。
——自分のための「練習」という概念が、今の青木プロには存在しないわけだ。
青木あ、さすがに試合前、直前の週のどこか1日は、旦那と1回は相突きをする時間は作ります。家から一番近い「WINDさん」に行って1回だけ。試合直前に旦那と7~8先(7~8ラック先取)を1回やって、「よし、はよ帰らな」「よし、保育園お迎え行こ」でおしまいです(笑)。
——それ、練習というか「生存確認」に近い密度ですね。
青木自分の一人練習は完全にゼロです。でも試合前に、さすがに試合感がないと困るな、と思って、その1回だけを大切に撞く。そんな生活なんです。
——遠征の時も、仕事との兼ね合いが相当大変でしょう。
青木土曜も仕事なので。土曜日は有休を使わせてもらっていますが、さすがに金曜日の移動日まで休みは取れない。なので金曜は取れても半休、午後休。取らないことも多いです。終わってから一旦家帰って、荷物持って急いで行くので、会場近くのホテルに着くのは、みんなが練習もご飯も終えた夜遅く。一人でコンビニ飯食べて寝る、みたいな。
——日曜に試合が終わったら?
青木即帰宅です! 次の日からまた仕事ですから(笑)。子供が3人いて、2泊3日も私がいないと、もう家の中はすごいことになってますからね。月曜の朝は、溜まった自分の荷物と家族のものを合わせて、2回連続で洗濯機を回すところから1週間が始まる。それが、今の私の「プロ生活」なんです。
写真提供:青木知枝、On the hill!













