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ジャパンプールの現状と未来、そしてKAMUI BRANDが描く道

2025.05.25

株式会社エンヴィジョン代表・平岡正人氏インタビュー〜第4回〜

平岡氏は今月、WPAスポーツディレクター、ヨルゲン・サンドマン氏の来日に帯同

KAMUI TIPをメインアイテムに、トーナメントやトッププレイヤーをスポンサードし、様々な国のビリヤード関係者と関わりながら広くビジネスを展開している株式会社エンヴィジョンの平岡正人代表。ワールドプールシーンの現状を最もよく知るジャパンプール関係者の1人である平岡代表に、エンヴィジョンと世界の関わりから、活況を呈しているアジアの状況、さらにはWPAとwnt.を巡る動きなどについてじっくりとお話を伺ってきた。最終回となる今回は、ワールドプールシーンの活況を踏まえ、視点を日本国内「ジャパンプール」に移し、その現状と未来、そしてKAMUI BRANDとしての関わり方について語っていただく。

第1回 ワールドプールシーンとKAMUI BRANDの関わり
第2回 WPAの過去の課題と、あるべき姿に向けた模索
第3回 wnt.の戦略とプレデター、WPAとの関係性

●リーダーシップの不在と変化への躊躇という構造

――ここまでワールドプールシーンのダイナミックな動きや、WPAwnt.といった組織の現状について伺ってきました。その一方で、日本のビリヤード界、いわゆる「ジャパンプール」は、世界の活況からやや取り残されているような印象も拭えません。平岡さんは、このジャパンプールの現状をどのようにご覧になっていますか?
平岡正人代表(以下、平岡): そうですね……率直に申し上げて、世界の動きから取り残されている、という危機感は持っています。ビリヤードが好きだという気持ちは皆さんお持ちでしょう。しかし、その「好き」という気持ちを、どのように次世代へ繋げ、業界全体の発展に結びつけていくかという視点まで広げられているかというと、まだ十分ではないのかもしれません。

――と言いますと、具体的にはどのような点でしょうか?
平岡: 例えば「誰かがやってくれるだろう」「こういう条件が整えば協力する」といった受け身の姿勢が散見されるように感じます。自ら積極的に行動を起こし、業界を良くしていこうという主体的な動きが、もっと活発になる必要があると考えています。

――「必死さがない」「お金がないからできない、というのは本質ではない」といったご指摘も以前されていましたね。現状を打破していくためには、まず何が必要だとお考えですか?
平岡: ええ。結局のところ、本気で現状を変えたいという強い思い、ある種の「必死さ」とでも言うべきものが、もっと求められるでしょう。資金面の問題を口にする方もいますが、それは時として、行動を起こさないことの一つの理由になっている側面も否定できません。本当に情熱と覚悟があれば、知恵を絞り、今できることから少しずつでも始められるはずです。

――そういったジャパンプールの現状には、何か構造的な要因があるのでしょうか?
平岡: 一つの要因として指摘できるのは、「変化」そのものに対する慎重な姿勢、現状を維持しようとする傾向が比較的強いように見受けられることです。そして今は業界全体を力強く牽引していくような、明確なリーダーシップが求められていると思います。

――変化を恐れる、ということでしょうか。
平岡: 「間違ったらどうしよう」「失敗したら周囲にどう見られるだろうか」といった不安が先に立ち、思い切った一歩を踏み出せない、ということはあるでしょう。しかし、それではなかなか前進は望めません。新しい計画を立てるにしても、例えば最低でも5年先を見据え、そこから逆算して今何をすべきかを考えるといった長期的な視点もより重要になってきます。時間を有効に使うという意識も同様に大切です。例えば、会議で物事をなかなか決められず、先送りにしてしまうことがあるとすれば、それは準備のあり方を見直す良い機会と言えるでしょう。

――そういった課題は、ビリヤード業界に限ったことではないかもしれませんね。
平岡: ええ、おっしゃる通りです。これは日本の多くの組織や社会全体に見られる傾向の一つと見ることもできます。例えば最近話題になったいくつかの企業の問題なども、根底には同様の構造的な課題が潜んでいる可能性が考えられます。変化を恐れ、本質的な課題への対応が遅れることで、結果として大きな流れから取り残されてしまう。ビリヤード界も、そうした状況に陥らないよう、常に自らを省みる必要があると考えます。

――では、この現状を変えていくためには、具体的にどのようなことが求められるとお考えですか?
平岡: まずは、やはり「行動する」ことです。どんな些細なことでもいいですし、一人でできることからで構いません。そして、失敗を過度に恐れないこと。むしろ、様々な試行錯誤の中から学ぶという姿勢が大切です。仮に上手くいかないことがあっても、そこから何が問題だったのか、どうすれば改善できるのかを真摯に分析し、次に繋げることができれば、それは非常に価値のある経験になります。

――新しいことに挑戦する際には、様々な困難も予想されますね。
平岡: もちろんです。新しいことを始めようとすれば、必ず不安が伴いますし、時には周囲から理解を得られないこともあるでしょう。労力も資金も必要になります。しかし、そうした困難を乗り越えてチャレンジする意志がなければ、現状を変えることは難しい。既存のやり方やしがらみに囚われず、本質的な改善を目指す姿勢が求められます。

●KAMUI BRANDのスタンスと日本との関わり方

――平岡さんご自身、あるいはKAMUI BRANDとして、ジャパンプールとどのように関わっていきたいとお考えですか? 非常に厳しいご意見もいただきましたが、そこには日本のビリヤード界への期待もあるように感じます。
平岡: 私たちの基本的なスタンスは、創業以来一貫しています。国籍や地域には一切こだわりません。「一緒にできる行動する人と仕事をする」。これがエンヴィジョンのコンセプトであり、私たちの活動の原点です。その相手がたまたま海外に多いというのが現状というだけですね。時折、「日本で成功したのだから恩返しすべきだ」といったお話も耳にしますが、そういった形で一方的に何かを期待されることには少し違和感を覚えます。それは、どこか他者に依存しようとする姿勢の表れでもあるように感じてしまうからです。私たちが重視するのは、あくまで「志を共有できるか」「具体的な行動が伴っているか」という点です。

KAMUI BRANDは、エストニアでのトーナメントも冠スポンサーとしてサポート

――では、ジャパンプールにも、そうした「志」や「行動」が見られれば、共に歩む可能性はあるということでしょうか。
平岡: もちろんです。マーケットサイズが小さいということは、見方を変えれば、関係者が一致団結しやすいという利点にもなり得ます。30年前から業界を支えてきた方々もいらっしゃいますが、そこに「自分が業界を変えていくんだ」という強い意志とリーダーシップを持った新しい力、あるいは既存の方々の中からもそうした動きが出てくれば、業界の再編や統合を通じて、事態が好転する可能性は十分にあると信じています。そうしたリーダーシップを発揮する方は、時には周囲から理解されにくいこともあるかもしれませんが、業界を良い方向へ導くためには不可欠な存在です。私自身が前面に立つというよりは、そういった方々や、志を同じくする動きを全力でサポートする側に回りたい。そう考えています。

――KAMUI BRANDとして、今後どのような未来を描いているのかお聞かせください。
平岡: 私たちのミッションは、ブランド名にも冠している「クエストフォーエクセレンス(卓越の追求)」、これに尽きます。国内外を問わず、この志を同じくする個人や企業と手を取り合い、ビリヤード界全体の持続的な発展に貢献していきたい。これが私たちの変わらぬ願いです。例えば、wnt.のランキングイベントなども、真に業界の発展に資する「機会(オポチュニティ)」となり得るのであれば、私たちも点ではなく線で関わり、共に汗を流せるパートナーシップを積極的に模索していきます。もちろん、そのためには綿密な計画と透明性が不可欠ですが。常に変化の中に新たな「機会」を見出し、困難を乗り越えてチャレンジし続ける。KAMUI BRANDはこれからもそうありたいと思っています。

――日本国内の活動についてはどのようなスタンスで臨まれるのでしょうか。
平岡:日本国内の活動に関しても、これまで大会ごとに10万円、20万円といったスポンサードをさせていただいていますが、これは単なる慈善活動ではなく、あくまでビジネスとしての投資です。もし、その投資に見合うだけの「機会」や「志」、そして具体的な行動計画が見いだせないと判断すれば、一旦その支援を見直すという選択肢も常に持っています。しかし、逆に言えば、そこに共に成長できるビジョンがあれば、私たちは全力でサポートします。それが変わらぬ姿勢であり、ビリヤード界への貢献の形だと信じています。
――本日は長時間に渡りありがとうございました。
平岡:こちらこそありがとうございました。

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