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【ビリヤードプレイヤー・ファイル】JPBA大井直幸プロ編_02

2025.12.30

着実な前進……世界で戦うために

Billiard Web CUE’Sがピックアップした、今年活躍したプロプレイヤー、将来が期待される注目プレイヤーのインタビューをお届けしていく「ビリヤードプレイヤー・ファイル」。その3人目は、日本のエースとして今年もまたワールドプールシーンの最前線で戦い続けた『日本プロポケットビリヤード連盟』(JPBA)、そしてwnt.プロでもある大井直幸(FR:825)。

●プロフィール
名前:大井直幸(おおい なおゆき)
生年月日:1983年1月10日(42歳)
プロ入り年:2006年(JPBA40期生)
出身地:東京都
JPBA公式戦優勝数:44
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ヨーロピアンオープン準優勝で幸先の良いスタートを切った大井直幸。しかし、その後のアジア、アメリカでの連戦では世界のトッププレイヤーたちとの厳しい戦いが続いた。42歳にして世界の最前線で進化を続ける男が、シーズン中盤の戦いを振り返る。

●肌感ではやっぱりかなりの精神力と集中力

——さて、ヨーロピアンが終わった後はベトナムですね。
大井プロ:なんでこれベトナム行ったんだろう。あの試合もひどかったなあ。ひどい戦いだった。ビリヤード場のトーナメントでポケットも大きくてベトナムのハスラーみたいなのと戦ったんだけど、ブレイクがすごく上手くて、本当の打ち合いになって、ヒルヒルでノーインして負けたんです。プレーも悪くなかったので覚えてるんですけど、このローカルトーナメントは面白かったですね。1回戦でフィリピン人に負けて、敗者側に行って。こういう経験は結構辛いんですけど、良かったりするんですよね。

——そして次がメインイベント、サウジアラビアでのワールドプールチャンピオンシップ(男子ナインボール世界選手権)ですね。
大井プロ:シェーン(・バンボーニング【アメリカ/FR:846】)に負けましたね。予選も結構厳しかったような気がします。1回戦は比較的にいいドローで、2回戦は張玉龍(台湾/FR:815)かな。2-7ぐらいからまくって、9-7で勝ったのを覚えてます。で、勝者側で残って64で1発目がシェーン。シェーンは柯秉逸(台湾/FR:847)と敗者最終をやって勝ち上がってきたから、本当に厳しい試合でした。

今年の世界選手権は決勝トーナメント1回戦で敗れ33位タイ(写真提供:Matchroom Pool

——ヒルヒルでしたね。ここ抜けたらって感じだったんですけどね。
大井プロ:ねえ、悔しかったなあ。あれは本当に悔しかった。まあまあライバルなんで、これからも試合は当たるでしょうし、だから経験じゃないですけど、ちゃんと手応えはありますよ。戦えるっていうのは昔からありますけど。

——昔から戦ってますからね。
大井プロ:そうそう。まあ優勝ラインに入れる可能性が前よりは出てきてるから。あとはまあ15年ぐらい早かったら本当に幸せなんだけど、そうは問屋が卸さない。

——いや、でも思います。着実に前進は……。
大井プロ:着実に? 42歳なのに。

——着実に、来てると思います。
大井プロ:ね、まだまだ頑張ってますね。

——随分前にインタビューした時、大井さんが海外に本格的に行き始めた頃は、世界のトップはいても、それに続く選手がいなかった。その中で日本から唯一飛び込んで、大体世界のベスト16ぐらいかな、という感じだったのが、今は若い選手も復活した選手もたくさん出てきて。正直、去年の戦い方を見ると、私の中では「ミスターセブンティーン」(17位タイ)だな、と。

大井プロ:ああ、17位タイ。まあそうでしょうね、平均がね。まあ悪くはない。でもやっぱりベスト8ぐらいにはしたいですよね。

——去年はそうでした。でも今年は、並みいるワールドトップスターがいる中で上がってきて、「ミスターナイン」ですね、今はベスト16。
大井プロ:ちょっと上がりましたね。

——はい。
大井プロ:いいですね、ちょっとずつですけど。でもやっぱりさっきも言ったように、試合はもう自分のことだし、自信がないわけじゃないんですよ。どこかで自分に自信はあるんだけど、自分が本当にどこにいるかはよくわからない。上も下もいるのは事実だから自分がどこに位置するのかも分からない。やっぱり一番上から見てみないと分からない。それが見てみたいですよね。どんな景色なのかが分からないから。これは夢に近いですね。おそらく優勝しても見れないだろうから、本当の意味で世界一にならないといけない。おそらく悲しいけど、見れないだろうけど、でも見れたらすごい。またビリヤードがわかるだろうし。やっぱりどんなものなのか見てみたいですよね。

——そうですね。
大井プロ:自分のプレイヤーとしての評価も含めて、それが見れたら嬉しいだろうな。幸せというか、落ち着くんじゃないかな、安心するんじゃないかな。してみたいもんです。

——その点では、まだまだ……。
大井プロ:まだまだやることがいっぱいあるから楽しみですね。それはもう楽しみつつというか、スイッチ入っちゃうと楽しいんで。今ちょっとオフなのであまりスイッチ入ってないんですけど、今逆にこういう話をしてトリップする(振り返る)んで、みんながいるところに感覚が戻るというか。大井直幸としてのプールプレイヤーの意識になるから、この企画は本当にありがたいです。

——いえいえ。でも、やはり聞きたいので。試合はYouTubeとかでも見れるので、結構見るんですよ。そうすると色々思うんです。「今、どんな感じだったんだろう」とか。ワールドチャンピオンシップは一番でかい試合ですけど、やはりここが一番勝ちに行かれてるんですね。
大井プロ:全員がそうだから。ここだけできればいいぐらいの感じです。

——今年は(カルロ・)ビアド(フィリピン/FR:837)が獲ってウハウハでしたね。
大井プロ:そうですね、もうウハウハですよ。金額も4000万ぐらいでしょう。いいトーナメントですよね。バックスタッフもそうだし、会場も、サウジアラビアの土地もそうなんですけど、お金持ちだから結構整ってるんですよ。かなり整備されたトーナメント会場なんで、会場としても世界一ですね。それにメンバーもフルメンバーだからすごい緊張感ですよ。これに出たことある日本人も僕とよっぴー(吉岡正登【FR:757】)ぐらいだから。本当にすごい試合だと思います。

——ここが目標地点だと。
大井プロ:世界中の皆がね。来年は勝ちたいですねやっぱり。まあチャンスはあるからね。

——この後すぐにアメリカでしたね。
大井プロ:こっからアメリカはすごい連戦だったんですよ。フロリダ、バトルオブブール、USオープンまで3週連続です。

——そこにはJPBAからも土方隼斗プロ(FR:804)や羅立文プロ(FR:802)、井澤勝幸プロ(FR:617※信頼性不足)も来られていました。
大井プロ:そうですね。よっぴーも一緒でした。この試合とヨーロッパの試合はよっぴーがいつも常にいてくれるから、すごく思い出深いというか。彼も3週連続だから本当にすごい頑張ってますよね。

——フロリダはどうでした?
大井プロ:フロリダではよっぴーとユニバーサルスタジオに行きました。楽しかったですね。試合後に1日空いたりするんで。試合はアロイシウス(・ヤップ【シンガポール/FR:839)に負けたんですよね。今年はだいぶヤップにやられました。

——でもやり返しもしましたね。
大井プロ:1回だけですね。1回サクッとやっつけただけで。半分はやっつけたい。

フロリダオープンは9位タイフィニッシュ(写真提供:Matchroom Pool

——確かに今年前半はだいぶやられてましたよね。
大井プロ:かなり強いですからね。

——今年のナンバーワンプレイヤーでしょう。
大井プロ:ヤップ、ジョシュア(・フィラー【ドイツ/FR:857)、フェダー(・ゴースト【アメリカ/FR:847】)。この3人はもう今、抜けてるグループだからかなり強い。メンタルも強いし精神力もあるし。

——実際に戦ってみて、そう感じますか?
大井プロ:そうですね、肌感ではやっぱりかなりの精神力と集中力。技術に特化したっていう感じじゃないですよね。もうそういうもんじゃないと思う。集中力と精神力の戦いというか、もうメンタルゲームなんで。自分の技術を生かすも殺すもメンタル次第、というか本当、ゲームの理解度と我慢です。

——なるほど。
大井プロ:チェスで言うなら、精神の拷問とかよく言ったりするけど、それに近いものはありますよね。耐え抜く力が、やっぱり彼らの方が少し強い。そこはどこまでできるか分からないですけど、もうちょっとできますからね。

——その耐える力、耐え抜く感じが、今年はいい感じでプレーにも現れていたように見えます。
大井プロ:少しできましたけど、でも全然まだまだまだです。練習の段階から、自分のイメージとはすでにズレがある。本当にやらなきゃいけないことでも、やっぱりどうしても気持ち良かったり、「もっとできるんじゃないか」みたいな、希望的観測の練習とかも増えちゃうんで。その辺をもうちょっと上手いこと、今日からでもすぐやらないと。いつも思ってるんですけど、そのスイッチをいつも探してるから。

——で、まあ現実的なこのラインに戻って。
大井プロ:そうです。まあ結構きついですけど。だから、今も今日も練習も考えてて。練習よりもやっぱりトレーニングの方を増やさないといけないなと。

——トレーニングというのはフィジカルトレーニングですか?
大井プロ:まあフィジカル、公園で運動したり筋トレしたりもそうなんですけど、練習で細かいテクニックというよりも集中力とか精神力を磨くというか……どうしても僕は技術に頼りがちだからね、その辺をやっぱり今後、ちょっとしかないけど、その日にでも変えないと。あとで変えようと思ったらまた来年になっちゃうから、もうその場で即チェンジして。今日からやります。

——でも、そういう環境ができていることは良いですよね。
大井プロ:そうそう。今はね。ありがたいことに。

●もうちょっと借金を早く返さないと

——この後はアメリカで試合が続きました。
大井プロ:フロリダはヤップに、ロアノークはマックス(・レヒナー【オーストリア/FR:817)に、USオープンは誰だったかな、ズン・クォック・ホアン(ベトナム/FR:823)か。初めて当たったんですけど、これもなんか変なゲームだったな。難しかった。

——この辺り、ファーゴレートも上がって823になってきて、調子は良かったのでは?
大井プロ:良かった良かった。全然調子良かったですよ。

——調子良かったというか、アベレージ的に戦えている感じが長く、そのレベルが上がったのかなという風に見ていました。去年、一昨年とかの、色々上に行ったゲームを見ても、キーとなるところで「あっ」みたいなところ「ここ行ったら勝つだろうな」というところでの、ふとした「ちょっと届かない」みたいなところがあったんですけど。
大井プロ:なるほど。今年はちょっと少なかったよね。

——なので見てて「ああ、強いな、世界のトッププレイヤーのプレーだな」という感じに見える、と。
大井プロ:良いことだね。で、アメリカ終わったら一旦また帰ってきたんですよね。1週間だけ。アメリカ遠征を3週間、4週間やって帰ってきて、で中国に入るんですね。そこの1試合目で……ああ、これは柯秉逸に負けたんだな。

中国1戦目の『ZEN CUSTOM CUE & YUAN 8 OPEN』は5位タイ(写真提供:Matchroom Pool

——はい。
大井プロ:これはまあまあ厳しいゲームだったね。覚えてますよ、散々やられてますからね。まあでも、これもなんかいつもとは違うゲームにはなったかなって感じだったね。もっと一瞬で負けるのが多かったんだけどそれはなかった。最低限の仕事はした感じだった。まあ矢は刺したかな半分だけ、みたいな。次に繋がるような戦いはできたかなと思います。相当舐められてましたからね、元々。やっぱり差があったから。いや今も差はあるんだけども、また違うのよ、もっと差があったから。

——それはやはり感じていましたか?
大井プロ:それはそう。だから、それがだんだん近づいてきてるから、彼らもやっぱりもう別に、舐めてはくれないですよ。まあこっからです、また。戦いになってくると思うんでね。

——そうですね。確実に近づいていると思います。
大井プロ:で、その次がチャイナオープンで、ここでキューを変えたんですよ。

——ここで変えたんですか。
大井プロ:そうです。別に変えるつもりなかったんですけど。

——元々使っていたものから変えるつもりはなかった?
大井プロ:なかったんですけど、中国の上海にハオ(HOW CUE)の事務所があるんで、そこで練習したんですよ。たまたま1本、次の新しいモデルみたいなプロトタイプがあって、すぐ気に入って。マックスとさくらプロと練習してる時にとても気に入って「こっちの方がいいな」と思って、すぐもう実戦投入しちゃいました。

チャイナ・オープンでも昨年大会に続いてベスト8入りを果たした(写真提供:WPA

——その場で?
大井プロ:その場で、3、4日練習して。みんな超不思議がってましたけど。

——以前の大井さんだと、結構ナーバスになる感じですが。
大井プロ:まあナーバスになるんですけど、普通になんか信用できたというか。で、この時1回戦も(ロビー・)カピト(香港/FR:817)だったし、結構きつかったけど、いいゲームだったんです。で、勝者最終でヤップに負けてまた上がってきてヤップに勝って。

——ここで倒したんですね。
大井プロ:はい。で、土方プロとやって、最後ゴーストとやった。まあ悪いゲームじゃなかった。だいぶ良かったですよ。今のキューになってからまたさらにちょっと安定度が増したかな。キューの性能というか、雰囲気が合ってるんでしょうね。まあでも、そこからバランス変えたり、大体決まってるんですけど、この後ちょっと迷ってたのは覚えてます。ホーチミンとかハノイとかベトナムの試合はちょっと不安定でした。その後のテンボールは大丈夫だったけど。

——男子テンボール世界選手権ですね。
大井プロ:ワールドテンボール……これもシェーンに負けたのか。その後シェーンと喋ったんですよ。「お前にナインボールもテンボールも当たって負けたんだけど、エイトボールも当たるかな」って。結局当たらなかったんだけど、これもチャンスだったんですよね。手応えあったのになあ、もったいない。これも勝てそうな試合、勝てるゲームだった。でも今まで負けてきているから、その分の借金を返してる作業ですよね。借金はやっぱり返さないと。

男子テンボール世界選手権は17位タイフィニッシュ

——対人ゲームですからね。
大井プロ:借金が残っちゃってるんですよね。今まで舐められた分だけ、キューに出ちゃうから。もうちょっと借金を早く返さないと。日本国みたいだ(以下次回に続く)。

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