【第52回全日本選手権SP_Vol.14】男子の海外勢注目選手?
男子海外勢注目選手紹介の第2回目は再び台湾・中国、フィリピン、ヨーロッパから6名の選手をピックアップ。第1回目に引けを取らない豪華な選手達だ。
張榮麟(台湾)
まず台湾から”火雲邪神”張榮麟。強者揃いの台湾の中でも屈指の実力・実績を持ち、’11年に『北京オープン』、『ジャパンオープン』を優勝。翌年の’12年には『エイトボール世界選手権』を制し世界王者となった。そして同年に台湾の先輩である楊清順に勝利して『全日本』初制覇を果たし、この年のWPAランキング1位を、2位と大差を引き離して確定させた。試合終了後、表彰式で張は「世界ランキング1位としてこの大会を優勝したかった。それが果たせて本当に嬉しい」と語っていた。その後は多くの国際大会で安定して上位に名を連ねるようになり、’17年には『ジャパンオープン』で大井直幸を破って2度目の優勝。’18年には『2018 インターナショナル ナインボール オープン』の勝者最終で柯秉中に5-11と、一度は敗れたが敗者最終に回りスカイラー・ウッドワード(アメリカ)に11-9で勝利し、決勝戦へ。柯秉中との再戦となった試合は13-11と大接戦の末に張が勝利し、優勝に輝いた。今年も一筋縄ではいかない相手としてJPBA勢の前に立ちはだかるだろう。
鄭?軒(台湾)
2人目は同じく台湾から鄭?軒だ。同国の張榮麟や柯秉逸、柯秉中と比較すると多少実績は少ないが、’15年の『USオープン』で台湾人選手として初の同大会優勝を飾るという快挙を成し遂げた。翌年には『チャイナオープン』で準優勝(優勝は?珈慶
)を果たし、今年行われた『WPAプレイヤーズ チャンピオンシップ』ではカルロ・ビアド(フィリピン)に12-11という激闘の末に勝利し優勝。今もなお自身のビリヤードをレベルアップさせ続けている。過去の『全日本』では’16年に、同大会の決勝トーナメントで青木亮二、張榮麟、羅立文、ミカ・イモネン(スコットランド)らを連破して3位タイとなった。果たして今年は『全日本』初戴冠を果たすことができるのだろうか。
?珈慶(中国)
3人目は中国から、”泰山神童”?珈慶。世界でも屈指のシュート力を武器に数々の国際大会で実績を積み上げたサウスポー。元は台湾出身だったが、’11年から中国へと転籍し現在に至る。遡ること14年前の’05年。当時?は史上最年少となる高校2年生の16歳という若さで『ナインボール世界選手権』決勝の舞台に立った。相手は台湾の先輩である郭柏成。16-12で先に優勝に王手をかけたのは郭だったが、たった1つのファウルから?が5ラック連取を果たし、逆転で世界王者の称号を獲得した。同年には『エイトボール世界選手権』でも優勝を果たし2冠を達成。神童という言葉でも物足りなささえ感じるほどの活躍ぶりを見せた。
その後も着実に成長を遂げ、’07年の『全日本』準決勝で同学年である土方隼斗とマッチアップ。結果は1-1から?が10ラック連取と力の差を見せ付ける結果となった。こうして初の『全日本』決勝の舞台に立った?は、ファイナルでも全く気負った様子を見せること無く、準決勝さながら爆発力のあるプレーで対戦相手の栗林達を11-3と一蹴。18歳にして自身の経歴に『全日本』のタイトルを加えた。今年はリニューアルされた『新USオープン』で準優勝(優勝はドイツのヨシュア・フィラー)、『チャイナオープン』で通算2度目の優勝を飾っている。今年もまたマスワリ量産の?劇場が見られるのだろうか。
ジェフリー・デルーナ(フィリピン)
4人目はフィリピンから、世界一のパワーブレイクを繰り出すと言われているジェフリー・デルーナだ。未だ国際大会でのタイトルは無いが、’06年に行われた『アジア競技大会』男子ナインボールで銀メダルを獲得すると、その後は『エイトボール世界選手権』や『チャイナオープン』、『ナインボール世界選手権』など、数多くの国際大会で3位タイや5位タイとコンスタントに成績を残している。『全日本』の最高成績は’16年の準優勝。その年は決勝トーナメントで栗林、同国の先輩であるウォーレン・キアムコやデニス・オルコロ、鄭?軒などを破って決勝へ進出したが、柯秉逸の前に破れ、国際大会初制覇とはならなかった。世界最強のパワーブレイクは一見の価値ありだ。
ヨハン・チュア(フィリピン)
5人目は再びフィリピンから、ヨハン・チュア。『全日本』はこれまで’14年、’16年に5位タイ、’12年、’13年に3位タイ、’15年、’17年に優勝とベスト8以上に6回も進出しており、チュアにとって非常に相性の良い大会だと言える。特に優勝した’15年、’17年の決勝の相手は共にフィリピンの先輩プロで、’15年がロナート・アルカノ、’17年がジュンダル・メゾンと対戦しそれぞれ11-7、11-2で勝利。フィリピンの次代を担うスターとして名乗りを挙げた。今年は『WPAプレイヤーズチャンピオンシップ』で3位タイ、『テンボール世界選手権』、『チャイナオープン』で9位タイ等の成績を残している。
ミカ・イモネン(フィンランド)
6人目はヨーロッパから、”アイスマン”のニックネームで知られているフィンランドのミカ・イモネン。以前にご紹介したトーステン・ホーマン(ドイツ)と同様、数多くの国際タイトルを獲得している名手で、’01年に『世界選手権』を初優勝、’08年、’09年に『USオープン』2連覇。また’09年には『テンボール世界選手権』も優勝しており、ナインボール・テンボール共に世界を制している。『全日本』ではホーマンと異なり、非常に高い成績を残しており、’01年、’02年、’04年、’05年で準優勝。’08年には過去4度、頂点に届かなかった悔しさを全て払拭する初戴冠。これにはさすがのイモネンもゲームボールを入れた直後に大きなガッツポーズ、そしてキューを置いて椅子に座るやいなや万感の涙と、氷が溶けてしまうほど感情を爆発させていた。
この決勝を振り返って本誌’09年2月号のインタビューでは「勝った瞬間、自分がどれだけこの大会での勝利を求めていたかが良くわかった。こみ上げてくるものを抑えきれなかった。比べられるものではないのだけど、USオープンに勝ったときより嬉しかったよ」と、『全日本』に対して並々ならぬ思いであったことを明かしてくれた。”アイスマン”のプレーにぜひ注目して頂きたい。
『全日本」は『ジャパンオープン』と並び、これまでご紹介したようなワールドスター達を見ることができる貴重な大会であり、国内の公式戦では味わえない世界基準のビリヤードを堪能することができる。ぜひ、会場に足を運んだ際には日本人選手達の応援をしながら、海外からやってくる選手にも注目してみて頂きたい。