中式九球、ゴールデンナインボールって何?〜後編〜
点数制と時間制の併用、さらに新たな四球過線でエキサイティングに

新たなナインボールを種目に優勝賞金1億円のビッグトーナメントが開催中だ(写真提供/土方隼斗)
現在中国・北京昌平で開催中の『2024-2025 “Liber Win Billiard Cloth” Duya Legends Tour Golden Nine Global Finals』(2024-2025“利百文台尼”独牙传奇中式九球国际巡回赛全球总决赛/ゴールデンナイングローバルファイナルズ)。この大会は、これまでにないナインボールである「中式九球」(ゴールデンナイン)を種目としたシーズン最後を飾るビッグイベントで、その優勝賞金は約1億円。エイトボールを種目に先日成都で行われた『JOY CUP The 13TH HEYBALL MASTERS Grand Finals』(ヘイボールマスターズグランドファイナルズ)と同規模を誇る世界最大級のビリヤードトーナメント。
前編ではその概要をお伝えしたが、後編では、主催者である『DUYA(独牙)』が今大会用に定めたオフィシャルルールの中から、ゴールデンナインの特徴が現れている部分をピックアップしてみた。
●点数制、時間制併用のゲームフォーマット
ゴールデンナインのルールの中で通常のナインボールと最も大きく違うのが、試合で採用されるゲームフォーマット。具体的には、通常のナインボールでは⑨を入れた方がそのラックの勝者となって1点を獲得し、例えば9ラック先取のように、予め決められたラック数に到達したプレイヤーが勝ちとなる。
それに対してゴールデンナインは、ラックを取ったシチュエーションによって以下のように与えられる点数が違い、予め決められたラック数と試合時間の中で多くの得点を挙げたプレイヤーが勝ちとなる。またラック数と試合時間では、試合時間が優先され、所定のラック数に到達していなくても、タイムアップした時点で試合は終了となり、その時点での得点によって勝者が決まる。
●ゴールデンナインの時間制限(オフィシャルルールより)
各試合の合計時間は●分とします(※●は試合によって任意に決定)。各ショットは45秒以内に行い、各選手は各ゲームで1回延長をコールでき、その延長時間は30秒です。審判員は以下の時点でプレイヤーに警告を行うべきです。
・試合時間が合計時間の1/2に達した時。
・試合終了まで残り5分の時。
・試合終了まで残り1分の時。
・試合終了まで残り10秒の時、5秒の時、審判はカウントダウン(5、4、3、2、1、0)を行い、試合終了となります。
●ゴールデンナイン試合方式(オフィシャルルールより)
試合はポイント制を採用し、ワンラックは「大金」、「小金」、「通常勝ち」、「ファウルによる得点」などで得点を計算します。各ラックで「大金」を達成したプレイヤーは10点、「小金」を達成したプレイヤーは7点、通常のラック勝者は4点を得ます。プレイヤーが試合中にファウルを犯した場合は相手は1点を得ます。
①大金:ブレイク側がブレイクから取り切りを完了する(マスワリ)
②小金:以下の3つの状況が「小金」の達成に該当します
・ブレイクでポケットした場合、ブレイク側が連続した取り切りの過程で⑨ボールをコンビなどで入れる。
・ブレイク時以外で、テーブル上に①と⑨がある場合、いずれかのプレイヤーが取り切りを完了する(⑨のコンビなどは除く)。
・ブレイクで⑨がポケットインする。
③通常勝ち:大金、少金以外の方法でラックを獲得した場合は全て通常勝ちとみなされます。

ベトナムのエース、ズン・クォック・ホアンを下した試合で土方は大金、小金、大金、3ラックで18点のロケットスタートを決めている(写真提供/土方隼斗)
④ファウルによる得点:プレイヤーが試合中に、1回目と2回目のファウルを犯した場合、それぞれ相手は1点を得ます。プレイヤーが1ラックで累計3回のファウルを犯した場合、3回目のファウルで相手は2点を得て、そのラックは終了します(※注:今回の試合では意図的なファウルは禁止されています。1回目の意図的なファウルは相手に10点が加算され、そのラックの敗北となり、2回目の意図的なファウルはその試合全体の敗北となります)
土方隼斗のダブルイリミネーションステージ2進出を決めたゲーム(YouTubeチャンネル『Alison Chang』より)
●ブレイクはパワーと正確性がより重要となる
通常のナインボールのブレイクは、全体的なプレーレベルが上がっていくにつれ、ショットできる場所を限定する「ブレイクボックス」の採用、ラックのウィングボールが入りにくくなるように⑨をフットスポットに置く「ナインオンフット」、ソフトブレイクを避けるための「スリーポイントルール」などの変更が加えられてきた。
ゴールデンナインではテーブルの性質上、通常のプールよりもブレイクでもボールがポケットする確率が低い中で、①をフットスポットに置く「ワンオンフット」で手球を置く位置はブレイク側から長クッション2ポイントを結んだライン以内(ヘッドライン内)となっている。しかし、ここにオリジナルの「四球過線」(4ポイントルール)が加えられることで、サイドからのパワーブレイクという、ラックシートが登場する以前はナインボールの定番であったダイナミックなプレーが多く見られるようになっている。
●ゴールデンナインの合法的なブレイクショットとファウル(オフィシャルルールより)
ブレイク時に最初にショットするのは①です。ブレイク時の手球の位置は、ブレイクラインからフットクッションまでの間の任意の位置です。手球の重心位置がブレイクラインを越えてブレイクした場合、初回は警告を与え、2回目のブレイク後はファウルと判定します。
①全ての選手の合法的なブレイクは「四球過線」を満たす必要があります。「四球過線」とは以下の通りです
・ブレイク時に4つの的球(手球を除く)がブレイクラインを通過する
・1つのボールがポケットインし3つのボールがブレイクラインを通過する
・2つのボールがポケットインし2つのボールがブレイクラインを通過する
・3つのボールがポケットインし1つのボールがブレイクラインを通過する
②四球過線を満たさないブレイクは、失機(機会損失)とみなされ、この時相手選手は以下を選択できます。
・現状のテーブル上の全てのボールの位置を受け入れ、自分またはブレイク側がショットを続ける。
・自分またはブレイク側が再度ブレイクする。
・「ブレイク失機」の場合、相手選手がショットを続けるか再度ブレイクするかを選択する時間は45秒であり、この時延長の機会はありません。
③意図的でない弱い力のブレイクファウルで、4つの的球がクッションに接触しなかった場合、ブレイクファウルとして罰せられ、この時相手はフリーボールでショットを続けるか、再度ブレイクするかを選択できます。
●1億円トーナメントはいよいよ決勝トーナメントに突入
このフォーマットとブレイクのルール、さらに難しいテーブルによってナインボールでありながらかなりオリジナルなゲーム性を持つことになったゴールデンナイン、ちなみに本日からスタートしたベスト32からの決勝トーナメントは、準々決勝までが「Limit 210 mins | 35 Frames」(35ラック、3時間30分打ち切り)で、準決勝以降が「 Limit 240 mins | 40 Frames」(40ラック、4時間打ち切り)となっている。

28日の時点で大会は、負ければ終わり、シングルイリミネーションの決勝トーナメントがスタートしている。ここにはwnt.でも活躍する柯秉逸、柯秉中の台湾ツートップの他、wnt.には参加せず、ヘイボール、ゴールデンナインのトーナメントに積極的に参戦しているデニス・オルコロ(フィリピン)らのワールドトップスターの他、2019年に、弱冠18歳で全日本選手権を制した鄭肖淮、2024年のヘイボールマスターズグランドファイナルで1億円を獲得している楚秉杰といった強力な地元中国勢らが優勝をかけた激しい戦いを繰り広げている。