345名が繰り広げた3日間のJOを振り返る
第39回ジャパンオープン@東京・ニューピアホール特設会場
陳思明(左)とアントニー・ラガが実力通りのプレーで戴冠
巨大な台風が関東地方を直撃するという情報にざわついたシールバーウィーク頭の先週末。結局台風の進路が少し東にそれたこともあって大きな被害はでなかったようだが、同時にジャパンオープンに参戦した日本勢にとっての神風にもなってはくれなかったようだ。男女4名のファイナリストはすべて海外勢となり、男子はフィリピンの若手、アントニー・ラガ、女子は中国の陳思明が共に大会初優勝を飾った。まずは女子から試合を振り返っていこう。
国内74名に加えて海外勢10名の参戦があった女子。海外勢の注目は2014年のチャンピオン、台湾のウー・チーティンと2011年の全日本選手権覇者、中国の陳思明。日本勢では、ヴェトナムで開催されている女子オープン参戦のためにJO優勝経験者である河原千尋と平口結貴が不参加となってしまったが、大会連覇&3勝目を目指す青木知枝以下のJPBA勢が頂点を目指す。
20日(日)におこなわれた予選では陳思明、青木知枝が決勝日ベスト8に残るも、ウー・チーティンはベスト32で大会4勝目を目指す栗林美幸に敗れてしまった。また、予選日には渋谷CUE会場の進行が遅れて閉店時間前に終わることが出来ず。このトラブルでベスト16の2試合がバグース道玄坂店に移動して試合続行となり、終了時間が深夜1時になってしまった。
筆者の記憶では20年程前にもお台場の予選会場を使った時にてっぺんを回った記憶があるが、当時はチェスクロックがまだ採用されていなかった。ちなみに池袋ロサでおこなわれた男子の予選2日目は20時前の終了だった。
陳思明とフィリピンのデニス・サントス vs JPBA勢となった決勝日。小西さみあが陳思明との全日本覇者対決に挑み、一時は5-4とリードする局面もあったのだがそこからギアを上げられて惜敗。青木も府川真理に敗れて連覇の夢が潰え、ベスト4は共に海外勢 vs JPBAの対戦に。
しかし栗林が陳思明に零封され、府川もサントスに討ち取られてしまい、決勝は中国 vs フィリピンに。これまでの実績から言えば、9ボール世界チャンピオンにもなった陳思明が圧倒しているのだが、なんと陳思明が2度もゲームボールをミスしてヒルヒルに。それでも最後はなんとか陳思明が制して、日本二冠達成となった。
華々しいデビューを飾った10年前の、カミソリのような切れ味はさすがに影を潜めたようだが、32歳になった陳思明はそれをカバーしてあまりある経験値を身に付けてさらに強くなったようだ。陳思明にとって、日本の実力者と認めている栗林との対戦は事実上の決勝戦という位置づけだったのだろう。また、惜しくも敗れたサントスだが、今大会が飛躍のきっかけになる可能性は大だ。ルビレン・アミット、チェスカ・センテノのフィリピンツートップを脅かすプレイヤーになれるか、注目していたい。
準優勝のサントス(左)は陳思明を追い詰めた
351名を集めた男子には恐らく過去最高となる48名の海外エントリーがあったが、ヴェトナムで大井直幸と土方隼斗も参戦中の10ボール世界選手権が開催されている関係からか、ほぼビッグネームの参戦はなし。
注目は昨年全日本選手権を制したフィリピンのカイル・アモロトだったのだが、予選会場に現れず。ちなみにアモロトはこれで2年続けて海外勢トップシードだったのだが、昨年も直前キャンセル。コメントは控えます。
大会初日、JPBA勢は各組トップシードとなるランキング上位16名全員が2日目に駒を進める順調な滑り出しとなったが、シングル128からは苦戦を強いられ、決勝日ベスト16はJPBA6、アマ3、フィリピン7という構成に。抽選の結果、最注目カードとなったのはアマチュア界のツートップ、現球聖位の小宮鐘之介と来週に防衛戦を控えた現名人位の喜島安広の対戦だ。
小宮と喜島はJPBA公式戦で初対決となった
両者がJPBA公式戦で対戦するのは記録上では今回が初めてで、小宮が5-6ビハインドから3連取で勝利を飾った。恐らくライブ配信がないのを残念に思ったファンも多かったと思うが、JPBA主催大会なのでこれは致し方なし。ただ、録画は近日中に公開になるはずだ。
大会史上初のアマ大会連覇まであと3勝とした小宮だったが、アントニオ・リニングとのベスト8は序盤でリードを許して2-7とリーチをかけられてしまう。しかしこのままでは終わらないのが「鐘之介」の強さ。ジリジリと差を詰めて遂にヒルヒル。最終ラックは②で回してしまい万事休すかと思われたが、リニングの⑧への出しがサイドの角に当たって入れがなくなる。
リニングのセーフティは見えたが入れは難しい。コーナーへのロングか?腹切りサイドバンクか? サイドを選択した小宮だったが……入らない。リニングがベスト4進出だ。同時に金澤蒼生と羅立文も敗れ、ベスト4はオールフィリピンになってしまった。同じ光景を昨年11月にも見せられたことを思うと、何ともやるせない気分になってしまう。
余談だが、小宮のラスト⑧を見て、筆者は10年前、台湾での陳思明の練習風景を思い出していた。アムウェイカップのステージ1がおこなわれていた会場で陳思明は、小宮と似たような、だがバンクはない配置をひたすら繰り返し一時間以上も撞き続けていたのだ。台湾では、2011年のJOを制した魏子茜が2時間以上センターショットを続けていたのを見たこともある。当時彼女はまだ高校生で、制服を着たまま練習していた。「練習が仕事、レース(競走)は集金」とは、某有名競輪選手の言葉だ。
決勝はフィリピンの次世代トップグループの一人、WNTでは準優勝経験もある28歳のアントニー・ラガと、御年62歳のアントニオ・リニングの対戦に。リニングが勝てば実に20年ぶり2勝目だ。還暦を過ぎているとはいえ、2年前の東海グランプリでは決勝で羅立文を零封して優勝。まだまだその力は衰えず……と思ってしまうのは日本人の悪い癖なのかもしれない。童顔のヤングスターはレジェンド相手に全く臆すことなく、上がり4連取であっさり日本初優勝を決めてしまった。
決勝戦はラガが力を見せつける形で勝利
昨年は史上初の男子決勝アマチュア対決にざわついたジャパンオープン。JPBAの2大ビッグイベントの一つなのだが、男子は飯間智也が22~23年に大会連覇して以降、この3年はJPBAプロからファイナリストが出ていない。我々日本のビリヤードファンが見たいと願うのは、男女共に日本のプロがライバル達をねじ伏せて勝利の栄冠を掴む姿なのだ。プロ達の奮起を願う。
次回全国オープンは10月の北陸オープンだ。
Text & Photo by On the hill!













