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【プレイヤーズボイス】青木知枝、NISHIKIを語る〜第1回〜

2026.09.07

道具選びの哲学:「短所を補い、再現性を高める」

2023年、2025年の『ジャパンオープン』を制し、国内女子トッププロとしての地位を確固たるものにしている青木知枝。そして現在、あらゆる面で彼女のプレーを支えているのが『NISHIKI TIP』だ。 今回から3回連載でお届けする本企画、第1回目となる今回は、青木プロがなぜNISHIKIを選び、どのような哲学を持って「道具」と向き合っているのかに迫る。

■「人」との縁から始まったブランドチェンジ

——まずは青木プロと『NISHIKI BRAND』の出会いから伺います。今や多くのプレイヤーがNISHIKIを使用していますが、青木プロが契約プレイヤーとなった時期もかなり早かったですよね。
青木:そうですね。私が契約した時は、まだ奥田玲生ちゃんしかいなかったか、そんな時期だったと思います。

——奥田プロが最初の一人目でしたから、本当にその直後、早い段階での加入だったということですね。
青木:そうだったと思います。

——それ以前は、他のタップメーカーと契約されていた時期もありました。
青木:はい、以前は『斬(ZAN)タップ』さんにお世話になっていました。

——斬さんですね。あちらも評価の高いタップですが、当時はどのモデルを使用されていましたか。
青木:『グリップハード』を使っていました。製品自体に不満があったわけではなく、むしろ良いタップだと思って使っていたんです。

——品質の良さは定評があります。そんな中でブランドを変える決断をしたのは、何か明確なきっかけがあったのでしょうか。
青木:きっかけは、NISHIKIの重田代表がこちら(Link和光市店)に別件のイベントなどでよく来られていたことですね。たまたま接触する機会が増えた時期があって、その時の重田さんのアプローチが印象的だったんです。

全国各地でブースを出展しプレイヤーとコミュニケーションを取るのがNISHIKスタイルだ

——具体的にはどのようなアプローチだったのですか。
青木:そうですね。「他社さんを使っているのは知っているから、こちらから無理にお誘いはしない。でも、もし気が向いたらいつでもどうぞ」というスタンスでした。その距離感が、私には合っていたんだと思います。

——なるほど。強引な勧誘ではなく、あくまでプレイヤーの意思を尊重する形だったと。
青木:はい。それに、NISHIKIは今の時代でも2,000円を切る価格(1,980円)ですよね。その「勧めやすさ」も魅力でした。自分がまだ斬を使っていた時期でも、周りの方に他のタップでおすすめを聞かれた際、「この金額でこの品質なら、試す価値があるよ」と自然に提案できたんです。

今も価格が変わらないNISHIKIのラインナップ

——高騰するタップ市場で「2,000円を切る」というのは、現場のプレイヤーにとっては無視できないコストパフォーマンスですからね。
青木:そうなんです。販売促進する側としても「売りやすい」というのはメリットだと思って。そんなタイミングで重田さんとお会いする機会が重なり、サポートしていただく流れになりました。

■「入れ」を簡単にするためのセッティング

——実際に使い始めて、現在はどのモデルに落ち着いていますか。
青木:今は『ブラックのH(ハード)』一択です(取材時は左記の状況だったが、現在はHOMAREを使用)。

——最初からハード系をメインにテストされたのでしょうか。
青木:色々試しましたが、結局グリップハードを長く使っていて「自分が硬いのが好き」というのは分かっていたので。一応柔らかいのも撞きましたが、やはり「硬いのがいい」と(笑)。

——好みがはっきりしていますね。合わせるシャフトは何を使用されていますか。
青木:アダムさんの圧縮材の『VI』です。

青木プロの相棒はMUSASHI+VI

——VIの圧縮材。ということは、現在のトレンドであるカーボンシャフトには移行せずに。
青木:カーボンも興味はありますよ。人のを借りて撞いたり、アダムさんからもテスト用に預かったりしているんですけど……。

——テスト自体は進めているわけですね。
青木:はい。でも、預かったモデルの重さやバランスが今の自分のキューと違いすぎて、性能を正しく判断できないというのもあって。何より、私、全くトビ(ズレ)が出ないキューというのは無理なんです。

——ある程度、自分の中で計算できる「トビ」がないと困る、ということですか。
青木:そうなんです。トビが出てくれないと狙いが作れない。打感もウッドシャフトが好きなので、初期のカーボンなどは撞いた瞬間に「良すぎて無理」と感じてしまって。

——道具が正確すぎて、これまでの感覚と乖離(かいり)してしまうわけですね。
青木:まさにそうです。コンディションによってはカーボンの恩恵がある場面も絶対にあるとは思うんですけど。ただ、今の自分は練習時間を潤沢に取れるわけではないので、道具を大きく変えることへの慎重さもあります。

■「ハエが止まるショット」を支える道具の再現性

——ウッドのVIシャフトに硬めの『ブラックH』。この組み合わせが、青木プロのプレーにどのようなメリットをもたらしていますか。
青木:一言で言うと「ビリヤードが簡単になる」ことです。

——「簡単になる」。それはプレイヤーにとって理想的な状態ですね。
青木:私のキューはよく不思議がられます。「シャフトもタップも硬い組み合わせなのに、なんでそんなにカチカチ言わずに、ちゃんとしなるの?」って。そこはアダムさんの技術の凄さなんですけど。

——しなりはあるが、先端はしっかり硬いと。
青木:はい。タップまで柔らかくしてしまうと、良く言えば「色んなこと」ができてしまう。色んなことができるというのは、実は凄く難しいことだと思っているんです。

——道具が多機能すぎると、出力が不安定になる可能性があるということでしょうか。
青木:そうなんです。単純な動きをしてくれればくれるほど、ショットの再現性は高くなる。特に私は、女子プロの中でもキュースピードが速い方ではないので。

——それもあえて、自分のスタイルとして受け入れている。
青木:ええ。冗談じゃなく、昔、キューのバットエンドにハエが止まったまま取りきったことがあるくらいですから(笑)。

——ハエが止まったままですか! それは驚きのエピソードですね。
青木:周りからも「お前のキュースピードはハエが止まりそうやな」と言われていて、ある日、本当に止まったまま難しい配置を取りきっちゃったんです。

——伝説級です(笑)。それほどスローなスイングを武器にするために、今のセッティングがあるわけですね。
青木:そう。キュースピードが遅いと、柔らかいタップでは球を「持っていきすぎる」イメージがあるんです。だから、ある程度球離れが良くて「パン」と離れてほしい。あとは「音」ですね。高い音の方が、自分のショットのイメージが良いんです。

——音のフィードバックで、自分のショットを確認していると。
青木:はい。私はキューを出しにいく切らしに行くショットの方が得意で、逆に横に出すのが苦手。その短所を道具に助けてもらいたいんです。

——「長所を伸ばす道具」か「短所を補う道具」か。青木プロは後者を選択している。
青木:完全に後者ですね。限られた練習時間の中でパフォーマンスを出すためには「再現性」がすべて。今のセッティングは、私にとってビリヤードを最もシンプルに、簡単にしてくれるパートナーなんです(第2回に続く)。

写真提供:NISHIKI BRAND
取材協力:Link和光市店

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