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初出場にして大本命の川端聡が優勝!

2025.12.09

第24回JPBAシニアオープンリポート@京都・サンク

現役トップランカーの強さを見せた川端

昨年は東京で催された『JPBAシニアオープン』が、今年は再び京都市伏見区の『サンク』を舞台に開催された。参加資格は55歳以上で、フォーマットはテンボールの6ゲーム先取(予選敗者側とベスト8以降は5先)。……といった定型の説明はさておき、色んな意味で面白く見どころ多いのがシニアオープン。今回は結果のレポートともに、ウォッチャー目線で気ままに連ねさせていただきたい。

グローブ率、カーボン率、ともに高し!

シニアオープンとはいえ、道具はかなり現代に即している。30年前にはほとんど見かけなかったグローブを着用し、カーボンシャフトを使用している選手が多いことに驚いた。また「やっぱりみんな勝ちに来てるんやなー」とは、運営に当たった大江明プロの言葉。一昔前には見かけなかったセーフティも多用。時代も戦術もアップデートされているのだと感じた。

会場となった『サンク』

全体に若返っている!?

最近の率直な感想は「全体的に若返っているなぁ」。いや、違う。対象とする年齢は徐々に上げられてきている。そう、出場者の年齢が下がったのではなく、私の年齢が上がっただけ(笑)。以前は「大先輩の同窓会」という印象であったが、最近は同世代が主力になってきたのだと。ちなみに初めてシニアオープンを取材したのは、2002年の第1回大会で今から23年前のこと。光陰矢の如し。

「単勝で1.1倍」

ビリヤードの試合を公営レースに例えるようで恐縮だが、今年の『JPBAシニアオープン』に川端聡が出場を決めた時点で、密かに囁かれていたのが「優勝候補大本命」を表すワードだ。川端はJPBA最新のランキングで6位。今年の『西日本グランプリ』では優勝を含む2度のファイナルを経てシリーズ順位で1位。まさに現役のトップランカーの1人だから、シニアオープンで「大本命」と評されるのも当然だろう。「川端プロが単勝で1.1倍だったら……。買う!」とは、観戦者の談話。

写真ににじみ出る撞球歴

シニアオープンを取材で訪れる楽しみのひとつに、被写体がフォトジェニックであるという点がある。フォームに特徴があったり、表情の深みや豊かさがあったりと人それぞれだが、必ず写真に手応えを得られる。選手がベテラン俳優みたいな被写体ばかりという訳ではないので、「撞球歴が写る」と解釈している。今回も歴代の名手が集ったので、せっかくなのでベスト8に入った4名のベテランプロ(元プロ含む)の写真も残させていただく。

5位タイ:大江明

5位タイ:大橋清孝

5位タイ:森野義博

5位タイ:的野正実アマ(元JPBA)

一周回ってビリヤードを楽しむ

今回、準優勝という好戦績を残した槇埜雅視アマは、「50歳以上が条件だった時に出場して以来」2度目のエントリー。精度の高いシュートを絡めて「リアリズム」に乗っ取ったクレバーなプレースタイルを感じさせた。最近の大会参加は「東海グランプリや北陸オープンに遠征旅行を兼ねて」出場している程度だと話す。そんな彼に限らずシニアオープンの参加者は総じて、肩書きや名誉の枠を超えてビリヤードの楽しみ方の幅は広がっているのであろうと感じさせた。この試合はビリヤードの魅力の深さを再認識させる機会。

準優勝:槇埜雅視アマ

ベテランと超ベテラン

そして3位タイに入賞した道川浩アマは10年ぶり2度目の本大会優勝を狙ったが、今回は叶わず。しかし『大御所』のニックネームで呼ばれて十数年は経っている。超ベテランの躍進は、まさに北陸の超人と脱帽。また同じく3位タイにつけた川野耕二は、関西で名を馳せる現役の名手。準決勝の(親交の深い)川端戦では、5先のゲームで3-0ダッシュと見せ場を作った。結果、ここから川端の5連取で試合は終わったが、キラリと光る高い攻撃力には感嘆の声も聞こえてきた。世間ではベテランの域、本大会では若手の域に。

3位タイ:川野耕二アマ

3位タイ:道川浩アマ

生涯スポーツであることの体現

この日は「とても長い1日」だった。年齢層を踏まえると、ベスト16あたりからは体力や気力の限界というワードが出てもおかしくない状況だったが、場内で弱音は聞こえてこなかった。それは熟練した選手のセルフコントロールでもあったであろうし、さかのぼれば昭和~平成の時代には明け方まで行われた公式戦も存在していたから、この辺りも「経験値」なのかもしれない。ただ、数十年前に培った知識と技術は体が覚えている。ということも示された結果であろう。予選を通過した往年の名手を含む16名を見ても、それは一目瞭然だ。ビバ・生涯スポーツ・ビリヤード。

現役トッププロの意地

ショートゲームにも関わらず大本命の圧を背負って勝ち切った川端は「さすが」の一言。ベスト32と準決勝では先行を許す展開で肝を冷やした場面もあったが、勝敗の主導権を最後は握るのが一流の証。もちろん結果を踏まえて書けることだが、やっぱりゲーム際はミスをしない。チャレンジする配置における(ツーウェイ系の)「ケア」も万全。JPBAのYouTube配信にも動画アーカイブに数多く雄姿は残っているが、特に決勝戦のラストラック、取り出しで勝負(ツーウェイのケアも)からの盤石マスワリなども必見。

川端は勝利だけでなくプロモーションという仕事もきっちりと果たした

トップランカーの矜持

ポケットビリヤードは運勢と呼ばれる展開なども勝敗に影響を及ぼす。普段のホームではテンボールの連マス、3連マスなど珍しくない選手も多いだろう。しかし、1.1倍超本命を相手には、誰もそれが出せない。それもビリヤード。勝ち切ったことは結果論だとしても、勝ち切るには名前もオーラも影響する。ただ「勝って嬉しい」ではなく、「僕が出ることで何か大会にプラスになれば」「YouTubeを観てくれる人が少しでも増えてくれたら」という言葉には、長年トップランカーとして活躍を続けてきた「トッププロ」ならではの本音であり矜持だと感じた。

生涯スポーツとして更に

2025年のシニアオープンには55歳~80歳代まで幅広い層が参加した。ベスト16からのトーナメント表(に残ったメンバーを含めて)をご覧いただいても、若い人(といっても55歳以上だが)が有利という対戦結果は少ない。野球やサッカー、バスケットボールでは、無論こうはいかない、厳然たる知的スポーツであり、何歳から始めても上達を実感出来る競技がビリヤード。しかも現役のトッププロと真剣勝負まで叶えられるのだから、今日から始めたいところ。

シニアオープンの現場からは以上です。

AKIRA Takata
大会アーカイブ動画:JPBA YouTube

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