「3日間、自分のことだけに集中することができました」
全日本選手権女子ナインボール優勝・小西さみあショートインタビュー
第58回全日本選手権大会で女子ナインボールの頂点に立った小西さみあ。過去2年、最終日に進出しながらも初戦敗退の悔しさを味わってきた小西が、今年は準々決勝で平口結貴、準決勝では台湾レジェンドの柳信美、そして決勝でも台湾の謝喻雯を下して初のタイトルを獲得。ここでは表彰式後にファンとの交流や記念撮影などの時間を過ごし終えた小西に話を聞いた。
——改めまして、優勝おめでとうございます。優勝直後は「頭が真っ白」とのことでしたが、少し時間が経った今のお気持ちはいかがですか?
小西 ありがとうございます。何十分か経って、今ちょうど、皆さんからお声がけをいただいて、「あ、優勝できたんだな」っていう実感がちょっとずつ湧いてきました。嬉しいのはもちろんなんですけど、まだちょっとこう、ほっとした気持ちの方が大きい感じですね。
——「ほっとした」というのは、具体的にはどういった気持ちからでしょうか?
小西 やはり、日本人が勝てたっていうところというか、ちゃんと決勝に残れたからには勝ちたかったので、なんとか結果を出せて良かったな、という気持ちです。
——全日本ではここ3年連続で最終日に進出されていますが、過去2年はいずれも初戦のベスト8で敗退していました。
小西 そうなんです、負けていました。確か一昨年が河原(千尋)さんで、去年が玲生ちゃん(奥田玲生)でした。あまり海外の選手と当たる機会がなく、逆にいつも知った顔と対戦する独特の空気感というか、そういう緊張感はすごくあったのを覚えています。
——それが今年は、海外勢との対戦も多かったですね。大会に臨むにあたって、何か心構えに変化はありましたか?
小西 そうですね。今回は海外の方や、今の若い世代の子たちとも当たることができました。でも、どんな相手でも、今回は予選から最後まで「自分のことだけを考えよう」と決めていて、そのおかげでうまく集中できてそれが結果にも繋がったのかな、と思っています。
——「自分のことだけを考える」というのは、プレーのことだけに集中する、ということですか?
小西 はい、基本的にはプレー面のことだけです。応援してくださる声や、自分で自分にかけすぎてしまうプレッシャーとか、そういうものを一旦ちょっと置いておいて、目の前の球のことだけに、自分の球だけに集中できるような気持ちで臨もうと。勝ちたいという気持ちが先行しないように、目の前のことに集中できたかなと思います。
——決勝トーナメント初戦(ベスト32戦)は、谷みいなプロとの対戦でした。
小西 はい、みいなちゃんとは今年いっぱい当たっていて、国内外で多分5、6回以上は対戦しているんですけど、成績は本当に半々だと思います。でも、仲良くさせてもらっているのもあって、毎度お互い全力で試合ができるので、気持ち良く、すごく勉強になりながら試合をさせてもらっています。
——次のベスト16戦、林媺玟との試合は、最終的にリーチをかけられてから追いついてマスワリで勝利しましたが、かなり厳しい戦いでした。
小西 そうですね。あの試合は時間も遅くなってきて、集中力がちょっと自分の中で途切れたなという瞬間があったのが反省点です。でも、最後まで相手のことは気にせず、自分のプレーをやり切ろうと思っていたら、最後のマスワリが「なんか出せたな」って。ちょっと腹をくくれたのかなと思います。タイムも入っていて、取り出しも難しかったのですが、覚悟を決めて行けたのが繋がりました。
——そして準決勝では、台湾レジェンドの柳信美に勝ちました。
小西 はい、実はリベンジです(笑)。以前、アムウェイカップのステージ2のテレビテーブルでフルセットで負けたのがすごく印象に残っていたので……。本当にすごい方ですし、レジェンドですからね。今回はフォーマットが勝者ブレイクだったこともあり、先に流れを掴んで走れた分、だいぶ逃げ切れたかなと思います。ただ、8-2になってからの追い上げはすごかったです。ものすごいマスワリとか、全部難しい球をしっかり取り切っていて、ああいうのを見ていると本当に見習うべきだなと思いました。
準決勝第12ラック、柳信美のマスワリ
——そこでも動じているようには見えませんでした。
小西 もう「(相手が強いのだから)まあ、そうだよなあ」と思いながらも、プラスに考えて、また自分のことに集中しようと切り替えることができました。ここ最近、ビリヤードのことで自分の中で悩みとかもあったのですが、少し整理がついてきたこともあって、腹をくくって臨めたのが良かったのかもしれません。
——そしていよいよファイナルです。決勝に臨むにあたって、特別な緊張はありましたか?
小西 準決勝から決勝の間に少し休憩時間があったので、そこで少し弱気になりそうというか、「勝たなきゃいけないかな」ってちょっと思っちゃった時があったんです。でも結局、今回の目標である「自分のことに集中しよう」というところに、ちゃんと回って帰ってくることができました。
——決勝の序盤は少しミスもあり、一進一退の展開でした。
小西 あそこで流れを掴んで走っていけたら良かったんですけど、やはり今までよりは硬くなってたかな、と今振り返ると思います。相手のブレイクも当たり始めて、「いつか来るだろうな」とは思っていました。
——追いつかれた後、相手のブレイクスクラッチもありました。
小西 はい。あれでかなり救われたというか……1日通してツキがあったなと思うんですけど、その流れからちゃんと自分に(ペースを)戻せた部分もあったかなと思います。
——その後、先にリーチをかけてから一度、上がりを逃す場面もありましたね。あの⑥-⑧のコンビネーションです。
小西 あのコンビ、実はエクステンションは残っていたと思うんですけど、「この後の配置で使いたい」と思ってしまって……。秒読みにも入っていたので、もしかしたらあそこで使うべきだったのかもしれないですけど、ちょっと悩んでしまいました。イメージはあったんですが、あの1球は思った感じに撞くことができませんでした。
——そして次のチャンスで、チャンピオンシップボールをしっかり③-⑨コンビで決めました。
小西 ありがとうございます。何かの時もゲームボールが③-⑨だったことがあって、すごい覚えがあるんですけど(笑)……今回は配置も難しかったので、球なりに取っていって「これかな」という感じでした。でも、硬くなることなく「ちゃんと決めよう」という心構えはできていました。
——優勝を決めた瞬間から、さらに少し時間が経ちましたが、改めて今のお気持ちを教えてください。
小西 こうしてお話しながら振り返ってみて、自分が目標として決めてきたことを、大会3日間を通してほぼほぼ実践できたかなと思います。そういうところでツキが回ってきたり、結果に繋がったりしたのかなと。今回はそういう流れがある時に、ちゃんと勝てて良かったです。全日本の優勝ってそんなに簡単なことではないですし、本当に……すごく嬉しいですね。良かったです。












