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日本初開催の「ゴールデンナイン」をリポート〜その③〜

2025.11.12

王鐘瑶レフェリー「日本の選手のプレースタイルには2つの興味深い特徴がありました」

11月1日〜2日(土・日)の2日間にわたり、神奈川県横浜市の『DUYA CLUB関内店』を会場に開催された日本初となるゴールデンナインを種目としたトーナメント『2025 Duya Legend Golden Nine international Tour -Japan Station』(DLT日本代表選考トーナメント)。ここでは今大会のために特別に来日し試合を裁いた王鐘瑶さんに、チャイニーズエイトとゴールデンナインの特徴や日本人プレイヤーの印象などを聞いてみた。

——本日はよろしくお願いします。今回はこの「ゴールデンナイン」の試合のために、特別に来日されたと伺いました。中国でもトップクラスの一流レフェリーであるあなたが、この大会のために来られたのはなぜでしょうか?
王: はい。この試合は、私たちが中国国内で展開している「独牙(DUYA/ドゥーヤ)」ブランドの、いわば海外選抜戦のような重要な位置づけにあります。現在、私たちは海外での試合開催を非常に重視しています。そこで今回、ドゥーヤから「こちら(日本)に来て現地の審判のトレーニングをし、あわせて試合の審判もしてほしい」という要請がありました。また、羅立文プロとは元々友人関係でもあります。この大会をサポートしたいという気持ちと、友人関係もあって、来日を決めました。

——日本に来られるのは今回が初めてですか?
王: いえ、初めてではありません。2017年に「乔氏(JOY/ジョイ)」のチャイニーズエイトボールの試合が大阪で開催された際に来たことがあります。確か全日本選手権の直後に行われた試合でした。

——王さんはチャイニーズエイトボールとゴールデンナイン(チャイニーズナインボール)の両方で審判をされるのですね。プロフィールを拝見したのですが、「国家一級審判員」という資格をお持ちです。これは中国の国家的な審判資格なのでしょうか?また、WPAなど他の団体の資格もお持ちなのでしょうか?
王: 審判の資格には異なる体系があります。例えばWPAの体系もあれば、中国独自の体系もあります。私が持っているのは、WPA傘下の中式台球(チャイニーズプール)連合会が認定する国際級の資格と、中国台球(ビリヤード)協会が認定する国家一級の資格です。

——レフェリー歴は10年以上と伺っています。審判の目から見て、「チャイニーズプール」(チャイニーズエイトボールとチャイニーズナインボール)はそれぞれどのような競技で、どんな面白さがあると感じていますか?
王: まずゴールデンナインについてですが、これはここ2年ほどで盛んになった競技です。チャイニーズエイトボールと比較して、試合のリズムが非常に速く、攻守の切り替えもより予測不能で、偶然性が高いのが特徴です。そのため、例えばアメリカンプールやスヌーカーをプレーする外国人選手にとっても馴染みやすく、適していると言えるでしょう。単体の的球をコールショットで狙っていくので、選手のより高い技術が求められます。

——ではチャイニーズエイトはいかがでしょう?
王:一方、チャイニーズエイトボールは、プレーを始めるのは比較的簡単です。しかし、ポケットの広いアメリカンプールのテーブルでプレーすると少し簡単すぎるかもしれません。そこで、ポケットが狭い中国式のテーブルを使うことで、難易度を上げています。これにより、ショットの正確さに対する要求が非常に高くなります。これは中国で20〜30年かけて発展してきた、より多くの人がプレーする習慣や文化に根差したスポーツと言えますね。ただ、私個人としては、その技術への要求の高さと速いゲーム展開から、チャイニーズナインボールの方が好きです。多くのプロ選手に聞いても、同じように感じている人が多いようです。

——審判だけでなく、ご自身でもプレーはされるのですか?
王: はい、プレーはします。ただ、最近は仕事が忙しくて、プレーする時間は少し減ってしまいましたが。

——選手としてトーナメントに出場された経験は?
王: プロの試合に出場したことはありません。ですが、小さなクラブの試合やイベントでの試合には参加したことがあります。私は審判以外に、SNSなどで活動するインフルエンサーとしての一面もありまして、そういった活動の一環で皆さんと一緒にプレーすることはあります。

——今回、日本の大会で初めてジャッジをされましたが、日本のプレイヤーの印象はいかがでしたか? 例えば、本日ジャッジされていた杉山プロと丸岡プロの試合などを見て、中国のトップレベルの選手と比べてどのような違いを感じましたか?
王: 最も大きな違いは、やはりこのテーブルに対する不慣れさだと感じました。普段プレーされていないのでしょう。その結果として、技術面、特にショットの正確さに差が出ているように見えます。このテーブルはポケットが狭く、より正確なショットが求められますから。一方で、日本の選手のプレースタイルには2つの興味深い特徴がありました。一つは、ディフェンスが非常に丁寧で堅実であること。そしてもう一つは、プレーの選択が非常に合理的であることです。中国の選手の中には、テーブルをクリアできる技術レベルにないと分かっていても、無理にでもポケットインを狙いにいく選手がいますが、私が今日見た日本の選手たちは、自分のレベルを理解し、無理攻めはしませんでした。ディフェンスを主軸に、守りながら辛抱強く攻撃のチャンスを窺う。そのプレースタイルは非常に素晴らしいと思いました。

——最後に、一流のレフェリーとして、審判をする上で最も大事にしていることは何でしょうか?
王: 最も重要なのは、まず「集中力」です。試合時間が長くなることもある中で、最初から最後まで高い集中力を維持することは非常に難しいことです。しかし、人間の本性を克服し、それを維持するよう努めなければなりません。次に「冷静さ」です。試合中には論争や小さな問題が起こることもありますが、常に冷静な状態を保ち、感情の波から素早く抜け出す能力が必要です。そして最後に、根本にあるべきなのが「公正さ」です。どのような状況であっても、常に公正な立場を貫き、特定の選手に肩入れしたり、他の要因によって判断を左右されたりすることがあってはなりません。

——なるほど。よく分かりました。本日はありがとうございました。今後のご活躍も楽しみにしています。
王: ありがとうございました。

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