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レッスンの現場から〜松野剛明プロ編2〜

2024.07.06

解析アプリで客観的な「現実」を見る

松野剛明プロは、「レッスンを受けるならプロがベスト!」でも紹介しているように、現在は、昨年10月、千葉県習志野市にオープンした『ビリヤードレッスンスタジオトリガー』で、初心者からタイトルを狙えるほどのハイアマチュアまで、たくさんの悩めるプレイヤーにレッスンを行っている。

第1回に続き今回は、松野プロがレッスンのために導入したスポーツ解析アプリ『DARTFISH』(ダートフィッシュ)に、これまでの長いプレーとレッスン経験で培ってきたメソッドを組み合わせた、「見てわかる、聞いてわかる」レッスンについて、実際にどのように行われているのかについて聞いてみた。

●客観的にものを見ることが大事です

――松野プロのレッスンの中で、解析アプリはどのように使われているのですか?
M 実際のレッスンではセンターショットが多いですが、僕がよく練習しているストレートショットの例で紹介すると、撮影した動画にいろいろな線が引けるんですが、それを見て、どのように狙っているかや、肘の角度などを見て解析することによって、まずは「なぜ球が外れるか」ということがある程度説明できます。

――ラインが一つの基準となって原因がわかるということですね。
M はい、これは実際にレッスンを受けた方にしか言えないことなので詳しくは説明できないのですが、ほとんどの人がコジっているとか、キューが左右のどちらかに出てしまっているというのが外す原因だと思っていますよね。でも実はそうじゃないんです。むしろすごく入れる人でもコジっている人はたくさんいます。実際、かなり高いレベルのプロプレイヤーでも、キューが本当に真っ直ぐ出ている人は少ないです。例えば、センターショット1つ取っても、許容範囲は、ポケットサイズがボール2個分あっても1.2mmありません。左右1.2mmの範囲にズレが収まって、必ず入れるだけ正確に真っ直ぐキューを振れているかというと実はそうではないんです。

――では、実際にどのように指導していくのでしょうか。
M 僕のレッスンではストロークの正確性よりも、どうしたらその人がフォームやストロークを大きく変えずにショットの成功率を上げるかということを教えます。もちろんコジリやキューの出方も見ますが、大体それ以外のところに原因がある場合が多いです。そのためにフォーム解析アプリが非常に役立っています。

――例えばどのような原因が?
M そもそも狙いがズレているケースというのもあります。僕自身も自分の狙いがズレている映像を解析したことがありますが、これは確認しなければわからなかった現実です。だから、自分の中では真っ直ぐ狙っているつもりでもなぜズレてしまっているかという話をする前に、レッスンではまず、ズレていることと、その状態で球が入っている時は、ズレをキュー出しで補正しているという、少し嫌な現実を見せる必要がある訳です。

――やはり一番大事なのは客観的に見ることができた上で説明されることなんですね。
M そうです。後は、この画像では出してないんですが、実際のレッスンでは、違う線が色々出てきます。実はそこがフォーム、ストロークを含めたショットの成功失敗につがる大きな要素でもあるんですが、この部分は受講した方だけの秘密です。なぜかと言うと、その秘密を知ったら球が入るようになるからです。実際、受講者のおそらく8割か9割はレッスンを受けた後に、自分のショットが変わって、これまでとは違う感覚で入れられるようになったと言って帰られています。

――そのような投稿をSNSでもかなり見ていて、それが取材のきっかけにもなってます。
M 結構シンプルで、本人が気付いていないだけなんです。実は、このたった1つか2つのことを気を付けるだけでショット力は上がります。ただしこれも、受講者が本当だと思ったとしても、解析アプリで現実を見ることができるからこそ説得力が増すんです。結局は、客観的にものを見ることが大事です。

――ではその現実を見せた後、どのように指導していくのでしょうか。
M もちろん、なぜ狙いがズレるのかということも解析することでほぼ説明できます。そしてその狙いがズレている状態を矯正していく方向性も示せるし、逆に毎回同じズレ方をすれば入るので、そのままの状態で確率を上げていくこともできます。そこの選択は受講者と話しながら進めていきます。矯正するためには、1度癖で覚えてしまったものを1回デリートしなければいけませんから、果たしてそれが必要かどうか、本人がどうしたいかということも含めて、僕の意見も述べながらディスカッションしていきます。

――ストロークそのものについての指導についてはいかがですか?
M これはブログで書いたことなんですが、僕は「球は叩くように撞かないといけない」と言っています。「乗せるように撞く」という表現がありますが、乗せるとか柔らかくという言葉に騙されて、ストロークが悪くなってる人がすごくたくさんいるんです。

――確かに、昔はよく言われていましたね。
M あれは「できている人」が自分の感覚を伝えている典型例の1つで、そもそも物理的に考えたらおかしい話なんです。僕も昔、高速度カメラでインパクトの瞬間を撮ったことがあるんですが、実際にはせいぜいが4000分の7秒とか8秒で、物理的に言うと「運ぶ」じゃなくて「衝突」という現象なんですよ。そんな僅かな時間の間に運ぶなんていうのは現実にはできなくて、恐らくそのスピードの上げ方や撞点への入り方によって、グリップにバイブレーションが上手く伝わった時にそう感じるということを言葉にしていると思います。だからそれをそのまま言語化して教えても恐らく伝わらないし、混乱させるだけなんですね。だからそういう部分も踏まえて、なるべく誰にでも伝わる言葉で表現しています。

――ここでも言葉が重要になってくるんですね。
M 僕のレッスンにおいては、抽象的、観念的な言葉や感覚を極力排除しています。だからと言って抽象的、観念的が間違ってるとは言いません。なぜかと言うと上手い人にとっては、それが一番正直で正しい言語なんです。ただし、結局レッスンでは、正しいか正しくないかではなく、伝わるか伝わらないかが重要だと思っています。

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