小宮鐘之介が激闘の末に5期連続のタイトル防衛に成功
第34期球聖戦 挑戦者決定戦 & 球聖位決定戦@千葉・Anything
小宮はこれで在位6期となった
今年もまた、ここ千葉県は新松戸駅前の「Anything」にやって来た。2022年の第30期防衛戦以降、ライブ配信を介して「Anything」も全国的に有名になったのではないだろうか。「第34期球聖位戦」は4月18~19日の週末、土曜日に挑戦者決定戦が、日曜日に球聖位決定戦が開催された。
現球聖位、小宮鐘之介のこれまでを簡単に振り返っておく。小宮が東日本A級戦で埼玉の本間俊行を倒して東日本代表になったのが2020年11月。この時はコロナ禍で開催が延期された上での開催だった。更に言えば、この年の決定戦は12月に開催予定だったのがコロナの再流行で延期になり、結局、第29期球聖戦が開催されたのは2021年10月。小宮は挑戦者決定戦で杉本優太に3-0で勝ち、翌日は第28期で喜島安広からタイトルを奪取した小笠原晋吾にセットカウント5-1で勝って球聖位になったのだ。その後の小宮の活躍を以下にまとめると、
●2022年5月……高上真一に勝って「第30期球聖位」防衛
●2023年4月……持永隼史に勝って「第31期球聖位」防衛
●2023年6月……決勝で小宮山秀男に勝って「全日本アマナイン」優勝。史上初の夫婦同時優勝!
●2024年4月……増渕享士に勝って「第32期球聖位」防衛
●2024年9月……決勝で増成亮太に勝って「JAPAマスターズ」優勝!
●2025年4月……大塚郷司に勝って「第33期球聖位」防衛!
●2025年9月……史上初のアマチュア同士の決勝で、中野雅之に勝って「ジャパンオープン」優勝!
今年の横断幕には「絶対球聖」という言葉が書き込まれていたが、これまでの戦績を見る限り、まさにその言葉通りというのが今の小宮鐘之介だ。
会場となった『Anything』
そんなトッププレイヤーを頂点から引きずり下ろすべく東西から名乗りを挙げたのが、高知の田中宣充と神奈川の村井元。田中は西日本A級戦決勝で大阪の大山俊介に、村井は同東日本で東京の持永隼史に、それぞれ勝っての初代表。ちなみに第31期の決定戦で小宮と歴史に残る死闘を演じて惜しくも敗れた持永は、第32期に続いて今回もA級決勝で涙を飲むことになってしまった。
田中宣充(左)と村井元
全国レベルの舞台で対戦するのは初めてという両者だったが、以前村井が仕事で高知に行った際、田中の店で撞いたことがあるそうだ。田中には元JPBAプロという肩書きがあり、村井は関東ではよく知られたSAだが、二人ともアマ全国タイトル戦への登場は初めてとなる。挑戦者決定戦は9ボール交互ブレイク3セット先取。1ラックは7先と、普段全くやることがない長丁場の戦いだ。
挑戦者決定戦は田中が先制
田中の応援旗(写真上)と応援団
球聖戦に限ったことではないが、セットマッチは先制した方が有利なのは自明の理。18日12時にスタートした第1セットは田中が5-2と先行するも村井が5-6と逆転。田中が追い付いてヒルヒルとなった最終ラックは最後の⑨を村井が穴前残しで田中が先制。しかし第2セットは村井が奮起してタイに戻し、第3セットは田中6-5から村井のマスワリで再びヒルヒル。
最終ラック、ここまでブレイクスクラッチ4回、イリーガル1回とブレイクに精彩を欠いていた田中がここでもイリーガル。①でセーフティを決めた村井がセットカウント2-1と逆転リーチ。そして第4セットは5-5から田中が連取してフルセットに。
村井がヒルヒルの激戦を制して挑戦者となった
村井の応援旗(写真上)と応援団
試合開始から6時間以上が経過した最終セット、村井が3連取で6-3とリーチを掛けたが、田中が粘って6-5に。第12ラック、田中のブレイクはこの日一番くらいの当たり。誰もがフルセットを予期したのだが、最後の最後の⑨が抜けてしまった。残り球はほぼ穴前残りで、村井が8時間近い死闘を制して今期の挑戦者に名乗りを挙げた。
現球聖の小宮(右)と村井
球聖、女流球聖を問わず、決定戦でありがちなのは挑戦者が前日の激闘で力を使い果たしてしまい、為す術もなく敗れてしまうパターン。今回はまさにそれが心配される典型的なケースだったのだが、日曜日に会場に姿を現した村井は意外なほど晴れやかだった。
当人曰く、東西対決という状況で応援団にも来て貰ったことで少なからずプレッシャーが掛かってしまった前日に比べて、強敵とはいえ普段から同じ関東で交流のある小宮との対戦の方が気は楽だ、とのこと。そう言う意味では、逆に小宮にとっての村井はこれまでの対戦者の中で最も手の内を分かり合っている相手だったか。球聖位決定戦はセット数が増えて5セット先取になる。
決戦は午前10時にスタート
19時10時に始まった第1セットは小宮1-0から村井が5連取で5-1。小宮が巻き返してタイに戻したが、村井リーチからマスワリで村井が先制。続く第2セットは小宮6-1リードから村井が怒濤の5連取でヒルヒルに戻し、最後をマスワリで締めて2セット連取。30分の昼休憩後の第3セットは村井5-0リードから小宮が1点返しただけで、最後も村井がマスワリで締めてなんと3セットリードだ。
村井が絶対球聖を相手にロケットスタート
ここまでの小宮はまさに「らしくない」感じ。以前の決定戦ではあまり見ることのなかったシュートミスが目立ち、それをことごとく村井に拾われるという展開になってしまっていた。しかし、ここは「Anything」だ。昼を過ぎて、小宮応援団が増え始めると、その声援に後押しされたかのように小宮が息を吹き返し、第4セット7-2、第5セット7-3と巻き返す。
試合開始から6時間が経過した第6セット。第10ラックを小宮がマスワリで5-5にするも、村井がマスワリ返しでリーチ。第12ラック、マスワリが見えた⑦で小宮が隠してしまう。セーフティ戦は小宮のスクラッチで決着。村井、セットカウント4-2で球聖位へリーチ。小宮が4セットビハインドに追い込まれたのは、第31期に持永に4-3とされた時以来のことだ。
序盤から波に乗れなかった小宮だったが……
第7セットは村井にプレッシャーが掛かったのか、7-3で小宮が勝利。村井が3連マスで攻勢をかけた第8セット、小宮もマスワリこそ出せないもののなんとかシーソーゲームに持ち込み、4-3からマスワリで5-3に。だがここから村井が粘って5-5に戻し、球聖位まであと⑨ボール2つと迫る。
次は村井のブレイクで取り出しが見えた。しかし村井これをミス。小宮が取り切って6-5。第12ラック、小宮のブレイクは入れがない。セーフティに行ったが①ロングカットがある。この日、セーフティかカットかという場面で村井はカットを決めてきた。ここも難しいショットにかけたがオープンに。
だがこの日最大の山場がまだ残っていた。小宮が⑦-⑧コンビで出しミス。コンビは決めるも⑦が難球に。小宮セーフティに行き、⑦ロングまっすぐが残る。村井、これがラッキーインでプレデターツアーのシュートアウトのような⑨が残ったがこれをミス。エクステンションを使い果たした小宮は入れセーフティ。今度は土手撞きの⑨が見えたが入らず。小宮が3セット連取で4-4のフルセット突入だ。
最大の山場となった第8セット終盤、これを決めれば村井が6-6に追いつく場面
だが結果論になってしまうが、前日から激闘続きだった村井に余力は残っていなかったということだったのか。20時20分に始まった第9セット、連マスを出した小宮に対して村井は無念の連続ブレイクスクラッチ。6-0から1点は返したものの、第8ラック、②セーフティ戦から回って来たが⑦が入らず。このカットを小宮が決めて勝負は決した。小宮鐘之介、球聖5連続防衛成功。通算では6期となり、喜島安広(19~22、26~27)の記録に並んだことになる。
初挑戦で小宮を追い詰めた村井にはこの日も応援団からの熱い声援が送られた
ほとんど土俵際まで追い込まれながら、「絶対球聖」の底力を見せつけた第34期球聖位。小宮はこの6年間で、今回を含めてアマ全国タイトルを8回獲り、加えてジャパンオープンにも勝っているわけだが、その9回の決勝(決定戦)全てが年上との対戦だった事実は書いておきたい。
近年、小宮より年下でアマ全国タイトルを獲った林武志、織田賢人、金澤蒼生は揃ってプロ入りしてしまったから、現時点では「絶対球聖」を脅かす若手が見当たらない状態だ。果たして球聖位通算記録の更新が掛かる来年は誰が挑戦者に名乗りを挙げるのか、これからの一年は候補者探しに注力してみようと思う。
絶対球聖を打ち破る挑戦者は現れるのだろうか
今期の球聖戦はこれで終了。全国のアマ連員の心は既に和歌山に向けられていることだろう。第60回記念大会となる「全日本都道府県対抗」、今年は47都道府県全ての代表が揃っての6月開催だ。
Text & Photo by On the hill!
大会アーカイブ動画:japa _Billiards












