中野雅之が20年ぶりにアマ全国タイトルを獲得
第26回マスターズ@大阪・マグスミノエ

中野は2005年以来の全国タイトルを手にした
終わらない夏、と書くとどこか感傷的なイメージが連想されるものだが、今年の場合はただただ「猛暑が」終わらない辛い夏……。9月6日~7日(土・日)、万博終了まであと一ヶ月となった大阪で、アマチュアの10ボール最強決定戦『第26回マスターズ』が開催された。
会場のマグスミノエに集まったのは、全国各都道府県の予選を勝ち上がって来た代表73名。その中には前年度覇者にして現球聖位の小宮鐘之介、昨年のアマローテA級優勝の松本真明、現女流球聖位の増田真紀子、そして2025 アマナイン覇者の金澤蒼生といったアマタイトルホルダーが名を連ねる。フォーマットは予選ダブルイリミネーション、勝者側6ラック先取、敗者側5先、ベスト16からのシングルが7先だ。

会場となった『マグスミノエ』
第1シードの小宮は連勝で予選勝者最終に進み、22年の名人位挑戦者、滋賀の林秀忠を倒してベスト16入り。決勝日も和歌山の末岡修、宮﨑の冨田孝志に連勝して、大会連覇まであと2勝とした。その小宮に勝者2回戦で敗れたのが岐阜の福本浩軒。
まだ中学2年生の福本だが、若者の成長スピードには本当に驚かされる。福本は敗者側で22年のマスターズ覇者、愛知の田尻大悟をヒルヒルで破る金星を挙げて決勝日入り。敗者4回戦では宮城の古田グレッグと再びヒルヒルにもつれこんだものの惜敗となってしまった。だが、全国のトップアマに交じっての大健闘はお見事。今後の活躍が楽しみだ。

中学2年の福本が猛者揃いのフィールドで奮闘
小宮の脇に勝ち上がって来たのは神奈川の園山亮。園山は敗者最終から3連勝での勝ち上がり。マスターズでトップ4に残るのはこれが初めてだ。反対側の山で対戦するのは埼玉の建川雄司と東京の中野雅之。建川は18年に決勝まで進んだが、現名人位の喜島安広に敗れての準優勝。ちなみに喜島はその年から大会4連覇を達成している。
中野は勝者2回戦で金澤蒼生をヒルヒル撃破。ベスト16では三重の織田賢人と接戦を演じたが5点に抑えこむ。ベスト8でも今年の全関東覇者、千葉の髙梨慎太郎にヒルヒル勝利だ。二人でアマナイン3勝のイケイケ若手コンビとまだ20代半ばの髙梨、伸び盛りの若手達だが、今回は試合巧者の中野が一枚上手だったようだ。
昨年の表彰写真は小宮 vs 西日本という構図だったが、今年はまるで全関東。小宮こそ連盟員ではないが、園山がKPBA、建川がSPA、中野がKPBA所属と、舞台が池袋ロサでも全く違和感がないメンバーが出揃った。

3位タイ:小宮鐘之介
ベスト4、序盤で先行した小宮だったが中盤で園山に逆転を許して大会連覇ならず。園山はあと1勝で自身初となる全国アマタイトル獲得だ。建川 vs 中野は序盤から中野がジリジリとリードを拡げて押し切り。中野にとってもこれが初めてのマスターズ決勝だ。

3位タイ:建川雄司
まだ昼間の強い暑さが残る時間帯、阪神がセリーグ制覇に一歩一歩近づき、甲子園は異様な盛り上がりをみせていたが、マグスミノエでは、両者の勝利への強い気持ちが静かに、そして激しくせめぎ合っていた。
どちらも既にベテランと言われる世代なので、こういうチャンスがそうそう巡って来ないことをよく知っている。だからこそこの絶好の機会を逃したくない、勝ってしまいたい。だが、勝ち名乗りを上げられるのはたった一人だけなのだ。

中野 vs 園山、決勝戦は関東勢対決となった
試合は徐々に中野がリードを拡げて6-3でリーチ。なんとか凌ぎたい園山だったが、⑦で中野に回してしまう。だが明らかに中野も緊張していて⑨でカタカタ。試合の行方を見守るギャラリーからも思わず溜息が漏れる。試合進行が遅れたこともあって、会場に残っているのは関東以外の人間ばかり。
思いは一つ、どちらにも勝って欲しいのだ。大ピンチを凌いで6-4とした園山だったが、続くラックで④-⑩コンビを狙うが惜しくも決まらず。タラレバだがこれが決まっていたらヒルヒルもあっただろう。そして⑤で無念のカタカタ。中野、今度はしっかり取り切って大会初優勝を決めた(大会結果はこちら)。

準優勝:園山亮
アマタイトル戦の常連というイメージのある中野だが、これが05年アマローテA級優勝以来、20年ぶり2つ目のタイトル獲得という事実には驚かされた。この間、15年と18年には球聖位挑戦者になったものの、大坪和史と喜島安広の壁を抜けなかった。
筆者がアマローテの取材に入ったのは09年からなので、中野のアマタイトル優勝写真を撮るのはこれが初めてだったのだが、とても良い笑顔を撮れたと思う。そう、勝ちたいという気持ちを失わずに戦い続ければ、チャンスは回ってくるのだ。園山の優勝写真を撮る日も、きっと近いうちに訪れることだろう。

次のアマ連タイトル戦は9月21日(日)、埼玉のセスパ東大宮で、喜島安広名人と山﨑洋平挑戦者による名人位決定戦だ。
On the hill!
大会アーカイブ動画:japa _Billiards