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栗林美幸が今季早くも3勝目!

2023.06.20

全日本女子プロツアー第3戦

6月17〜18(土・日)の両日、愛知県名古屋市の『名城』(予選は『春岡クラブ2併用)において『全日本女子プロツアー第3戦』が開催された。
初日は予選のダブルイリミネーション、決勝日は16人が集まるシングルイリミネーション、いずれもナインボール7先というのは近年の女子プロツアーの定型フォーマット。
今年の女子プロツアーとしては初となるアマチュアとして地元の原口さゆりも登場。序盤は小西さみあと互角にゲームを進めたが、中盤以降は小西がプロの貫禄を見せた。

『名城』

さて、今回の会場でも聞こえてきたのが「女子の試合が面白くなっている」という声。ファンとの交流においては以前から高いコミュニケーション力を発揮してきた女子。
あらためて試合会場を見渡すと、興味深い対戦カードが多いことに気づく。これは以前に光岡純子プロ(女子ブロック長)が本誌のインタビュー語っていた「層の厚さ」に由来していると感じた。
ベスト16初戦から河原千尋と佐藤麻子のジャパンオープン優勝者対決もあれば、直近の『大阪クイーンズ』で自身初となる表彰台に立ち成長ぶりを1つの形で示した高田奈実は若いエース・平口結貴と対峙している。
曽根恭子と奥田玲生、青木知枝と梶谷景美、夕川景子と丸岡文子の試合は、今回はそれぞれ”新勢力”側が勝利を収めた。世代の幅が広いだけでなく、全体のレベルアップも各カードを面白くしている。

3位タイ:青木知枝

3位タイ:久保田知子

そんな魅力的な対戦カードが続く中、試合は回転を追うごとに選手をふるい落としていく。夕方に出揃ったベスト4のカードは、河原と久保田知子の在阪カードと、栗林美幸と青木の四国出身対決に。
4人のすべてが優勝候補として目されるが、ここは『新旧』にカテゴライズすれば『旧』に入る河原と栗林が貫禄の決勝進出を決めた。

決勝戦を前にした選手紹介では「2人のファイナルは2019年以来」とのアナウンス。さかのぼって調べてみると、河原と栗林の女子ツアーファイナルは通算5度目で過去2勝ずつとイーブンの結果を残している。
さらに全公式戦ファイナルだと2007年のジャパンオープンを皮切りに計14回対戦して河原が8勝6敗と勝ち越している。ファイナル以外を含む2人の試合は全36回対戦して河原19勝、栗林17勝。
全て公式戦での直接対決という点を踏まえると、2人のキャリアもさることながら『経験値』の高さを実感するところ。

準優勝:河原千尋

10年以上にわたって「1位が当たり前」になっている河原と、今年既に2勝を上げて「1位最有力」の栗林の頂上決戦は栗林のマスワリでスタートした。
イレギュラーのない整ったテーブルコンディションも手伝って、両者揃って「仕上がっている感」満載の試合は、栗林に流れが傾いた。
結果、最後もマスワリを決め7‐1のスコアで早くもシーズン3勝目を飾った栗林は、「決勝戦はロールが良かった」と展開に恵まれたことに触れた。
すると隣にいた河原も「少し思った(笑)」とそれに呼応。もはや目先の勝敗に一喜一憂しない2人のファイナル戦績はこれで河原が8勝、栗林が7勝。

優勝:栗林美幸

「体調がすぐれない」ながらも自身のペースで戦い抜いた久保田は17度目の、仕事も家庭もプレイヤーとしても妥協を許さない青木は15度目の表彰台。
それぞれがまた経験値を1つ高めた名古屋の陣。ちなみに河原は通算で99度目となる表彰写真に納まり、栗林は90回目の表彰台と公式戦通算33勝目。
「早くも3勝を上げてのシーズン折り返しについて」栗林に話を向けると「何勝という意識はないです。ないことはないけど、それを意識して良い結果につながるものではないので、試合を楽しむことだけです」と、経験に裏付けられたコメント。
今大会の通算得失ラックを見てみると、栗林が得ラック42で失ラックが12で得ラック率7割7分8厘、河原も得ラック32に対して失ラックは16と3ラック撞けば2ラックを取る高水準。

今年は栗林の年になるのか、はたまた表彰台回数100の大台にあと1つと迫る河原が1位に返り咲くのか、既に1勝ずつを上げている小西、平口の20代が走るのか、勢いを見せる新興勢力が台頭するのか、プロ歴30年を超えるベテラン組が巻き返すのか。
参考までに国内女子で表彰台回数で100を超えているのは梶谷、高木、曽根の3人のみ。河原と栗林がここに名を連ねる当確ランプは灯っている。
なるほど「女子の試合が面白くなっている」のは間違いない。次戦は7月に同じく愛知県で開催される『東海レディースグランプリ』。後半戦の幕落としに要注目。

左から3位タイ:青木知枝、優勝:栗林美幸、準優勝:河原千尋、3位タイ:久保田知子

※ハイレベルにして展開が勝敗を決めた決勝戦の模様は後日CBNTで配信予定です

写真・文/Akira TAKATA

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