ウェブキューズはビリヤードの全てがわかる総合情報サイトです。

ザ・カワハラ・ワールド

2021.11.29

JPBA Ladies YouTube LIVE Event(関西)

west1129_winner.jpg

河原千尋が強さを見せ付けて優勝

その一日は、『ザ・カワハラ・ワールド』だった。11月28日の日曜日。秋の行楽シーズンで人が集まる京都で『JPBA Ladies YouTube LIVE Event』が開催された。これはJPBA女子ブロックが企画したイベントで、関東と同日に行われ、関西は京都の『POOL BLOW』が舞台となった動画配信を主とするもの。非ポイント対象試合ながら、河原千尋を筆頭に計7人のプロが、久しぶりの試合に意気揚々と集結し、そして再会を喜び合う姿が印象的だった。

west1129_hall.jpg

会場となった『POOL BLOW』

朝から地元京都を中心としたファンが訪れ、光岡純子女子ブロック長も挨拶で「大勢の方にご観戦いただき感謝しています」と、想像を上回る集客数に謝辞を述べていた。中にはかなり遠方からの来場者もいたとのこと。試合は当初の取り決め通り、関西では「エントリーが8人以下の場合はダブルイリミネーションの予選」を行った。結果、勝者側から河原と久保田知子が、敗者側から宮本理香と元廣麗子が決勝トーナメントに進出を果たした。

west1129_miyamoto.jpg

3位タイ・宮本理香

なお、この日は朝から全5回転でライブ配信が行われ、助っ人に駆け付けた浜田翔介(JPBA)が実況を担い、軽妙なトークで解説役を務める女子プロと明るい話題で盛り上げていた。また光岡も敗退後は自ら実況を担当して、美声と多岐にわたる話題で配信の価値向上に貢献し、限られたマンパワーの中で全力を尽くしていると感じさせた。

west1129_mitsuoka.jpg

実況担当として浜田翔介が参加

そして試合。まず予選で目を引いたのが河原だった。圧巻は朝一回転目の元廣戦。バンキングを制した元廣のブレイク後を含む2度のセーフティが決まらず河原が先行し、続いてマスワリを決め2-0とリードする。
そして3ラック目の取り出しで河原がセーフティを決め、これを元廣がクッションから狙うが惜しくもファウル。その後、元廣に出番が回ることはなかった。この試合、河原は6先でマスワリ4回、シュートミスはゼロ。久しぶりの舞台でワールドクラスの安定感を披露した。

west1129_motohiro.jpg

3位タイ・元廣麗子

続く勝者最終戦の相手は初戦を不戦勝で抜けてきた宮本理香で、宮本もまた朝の練習でも良い気配を感じさせていた。しかし河原はここでも完封勝ちを収めて、無失点のまま決勝シングル(準決勝)へと駒を進めた。また、河原に敗れた元廣と宮本が揃って準決勝に残った点も興味深く、ダブルイリミネーションの必要性を示すような展開となった。

west1129_kubota.jpg

準優勝・久保田知子

そして準決勝では久保田が宮本を、河原が元廣を再び下して、無敗同士の頂上決戦となった。先の準決勝で3の失点を許した河原だったが、この試合では2ラック目に7をシュートした際に自ら申告したファウルで久保田に1点を献上したものの、結果そのまま押し切り7-1のスコアで優勝を決めた。圧巻は5-1リードで迎えた第7ラック。ここでプッシュアウトを選択した河原は「相手に(シュートやセーフティを)決められても後悔しない自分自身最善の選択」と、後に語る形を残し、これに対して「ちぃちゃん(河原プロ)が空クッションで攻める選択をすることは想像できたけど、今の自分には決める自信がなくいい配置を残すイメージが浮かんだので」パスをした久保田。そして絶妙な加減で決めた河原が、取り切りからのマスワリで優勝を飾った。それは、まさに横綱の絶対王者の勝利でもあった。

表彰式後に「公式戦ではないけれど、練習してきた成果を実戦の場で出せたことに感触を得られました」と、準備が整っていた様子を窺わせた河原。そして「優勝の感想を」と求めると「嬉しいです」と囁くように、そして爽やかな微笑みを添えてコメントをした河原。来シーズンのトーナメント開催が平常化することが望まれる今、8期連続10度目の日本一を狙う絶対女王が、その貫録を見せ付けるような1日となった。
一方、惜しくも準優勝となった久保田も「今のレベルも認識していて、(河原戦で感じた差を)この先に超えて行きたい壁」と、更なる上振れに期待が持てるコメントを残した。

west1129_kawahara.jpg

1日を通して高いパフォーマンスを見せた

今回用いた『ザ・カワハラ・ワールド』というワードは、昨年にJPBAが企画した『オンライントーナメント』で男子プロをなぎ倒して優勝した河原のコメントにあったもの。その時に採択された試合形式(選手両者がそれぞれのテーブルでテンボールをプレーして、何個のボールを落とすかをスコアで競う)に対して「自分を貫けばチャンスがある私に向いたルール」というニュアンスで用いていた。そして今回は相手との駆け引きがあるナインボールというゲームの中で、存分に自分を貫き高いパフォーマンスを発揮し続けていた。崩さないリズムに継続して繰り出す安定したショット。セーフティの精度も上がったと感じさせ、死角は見当たらない。日本のエースが世界で刺激のシャワーを浴びて突き抜けていくシンデレラ・ストーリーが目に浮かぶ。国内外ともに早いトーナメント再開に期待したい。

Akira TAKATA

ページトップへ