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過去のニュース(2014年)

2014.03.04 トーナメント

試合の終わりは、スタートの瞬間

2014アムウェイカップ取材を終えて

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周婕妤、勝利の瞬間


昨年の覇者であるケリー・フィッシャー(イギリス)を相手に、10-8のリードでブレイク番を迎えた周婕妤(チョウ・ジェイユー/台湾)は、難解な配置を丁寧に取り切ってゆき、簡単ではない8番をしっかり爽やかに決めると、9番に対してほぼ理想的な位置へ手球を出した。そして10秒後にゲームボールを決め、キューを頭上に掲げて跳び上がり、何度も何度も拳を握ってからからケリーと抱き合った。

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大会後のパーティー。梶谷、河原(中央右・左)はケリー、アリソン(右・左)の両フィッシャーと共に


こうして2年ぶり3度目のアムウェイ制覇を果たした、台湾女子のエース周。地元の大きな期待に応えた優勝は値千金であったに違いない。そして表彰式では順位も国境もなく、笑顔で春の祭典を締め括った。夜には近くの小洒落たバーでパーティーが開かれ、「あの1球が惜しかったね」「次は中国で会おう」といった交流がなされた。この姿はまさに国際大会のシンボルだろう。

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同じく周とパーティーにて


日本からも河原千尋が同大会で自身最高となる5位タイ入賞を果たすなど、大きな成果が見える大会であった。ステージ1に挑戦した元廣麗子溝口清美久保田知子の3人には、現地で対談形式の取材が実現。また海外戦の経験値が最も高い梶谷景美や、台湾は第二の母国とも言えるほど馴染みの深い野内麻聖美、そして今回、戦績だけでなく大きな感触を得た様子の河原からも談話をもらうことが出来た。これらは次号のCUE'Sでまとめてお伝えする予定なので、ぜひご覧いただきたい。

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ステージ1から参戦した元廣麗子、久保田知子、溝口清美(左から)


パーティーの席で古い(10年以上前)台湾のビリヤード雑誌を見る機会があり、その表紙に夕川景子が載っていたりするなど、懐かしい誌面を日本のプロが各国の選手たちと一緒に眺めたりする絵も微笑ましかった。また河原は海外選手からの評価も目に見えて高くなっており、台湾流の表現で『酷妹』(クールガール的な意)というコピーも浸透しつつある。

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台湾の古いビリヤード雑誌を眺める梶谷、チャ・ユラム(韓国)


昨シーズンまでの国内女子戦線の結果を見ても、梶谷と河原が『2人の女王』として日本の2枚看板的な存在になっていることは間違いない。この層が2倍、3倍になれば日本人タイトル奪取の確率も同様に上がり、さらに国内戦がより厳しい戦いとなることで、さらに日本の代表選手の力量は高まるだろう。

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腰痛により今大会を棄権した野内(左)は2人の女王に続く筆頭格の1人


そのためにも、緊張が最高潮となる冒頭のような場面で、入れて出す、という力を身に付けることが絶対不可欠なスキルとなる。これには国内戦のファイナルを、そしてゲームボールを何回撞くことができるか。そんな経験値でも高められるだろう。前出の3人の対談内にも出てきた言葉だが、「今日本のトップにいる2人が世界に通用することを確認できた。だからあの2人といい勝負ができれば世界でも戦える」という認識に間違いはない。

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狙うは彼女達のポジション


つまり河原が階段を1つ上った今回。あらためて世界水準を国内で測ることが可能になったと言えるだろう。そして冒頭に記した周が跳び上がって喜びを表した瞬間。これを地元新聞社のカメラマンは見事に切り取って、その写真が翌日の朝刊に掲載されていて、特派員にとっても世界の頂点に立つために必要なスキルを体感する機会となった。

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大会を記事とした台湾の新聞


台湾はビリヤードがメジャー。だけど、それは日本のビリヤードが台湾へと持ち込まれ、国際舞台で台湾が力を誇示できる競技として、メジャーの座に押し上げたもの。ビリヤードそのものが持つポテンシャルの高さもまた、万国共通であることを忘れずにいたい。

Akira TAKATA