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2015.12.28 その他

思いと教えを胸に――梅田竜二、3年ぶりのトップ返り咲き

2015プレーバック・プロスリークッション戦線

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2015年のMVPは梅田竜二(写真提供/Carom Seminar)


「とてもつらい年になりました」――今年秋、とある席で梅田竜二はポツリとそう呟いた。5月の『全日本選手権』で3度目の優勝を果たし、7月には『全関東選手権』を制覇。年間ランキングでは5月以降ずっとトップを走っていた。年間最終戦の『全日本プロ選手権』で優勝した小林英明の猛追に遭うものの、僅差で首位を守って8度目のMVP。もちろん梅田の実績と力量を知る者は驚くこともない。3年ぶりに座ったそこは"指定席"のようなものだ。

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梅田は今年、様々な思いを胸に厳しいトーナメントを戦った


しかし、この1年、本人の胸中には様々な思いが去来していた。中でも大きかったのは敬愛する2人の偉大なキューイスト、小森純一と金京律(韓国)の逝去である。日本撞球史に燦然と輝く名手にして名士、小森の背中を見て育ち、年若く人懐っこい金とともに海外を転戦した梅田にとって、いや、日本中・世界中のキャロムプレイヤーにとって両選手の訃報は本当にショッキングなものだった。「(小森)先生が、気持ちの大事さを説いていた言葉、何度も思い出します」。授かった言葉はそのまま「日本のエース」の矜持として、梅田の2015年後半を支えていた。

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卓越したプレーと人柄で日本のキャロム界を引っ張り続けた小森純一氏


悲しいニュースばかりではない。2015年はいくつかの「復活」があった。2014年のMVP、新井達雄は2月の『東京オープン』で韓国のエース・趙在浩を抑えて5年ぶり3度目の優勝。7月には島田暁夫が『プロ3Cトーナメント・アカデミーZ戦』で6年ぶりのランキングポイント対象試合優勝を果たした。

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シーズン開幕戦でベテラン健在を見せ付けた新井達雄


また、開催を待ちわびていたギャラリーに万雷の拍手で迎えられたのは、3年ぶりに復活した『ニッカオープン』(8月)だ。怪我から復帰した店主の真野正光が流れるような球さばきで決勝戦まで進んだこともあり、一種異様な熱気が場内に渦巻いていた。

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久々の公式戦優勝を果たした島田暁夫


そのニッカオープンで勝利し、続けて『小森純一追悼試合』(11月。ランキング対象外)、『全日本プロ3C選手権』(11月)で優勝した小林英明が後半戦の主役だろう。試合の規模・グレード・相手などに一切頓着しない、ひたむきでハイレベルなプレーは、JPBF2015シーズンを大いに盛り上げていた。最終的に年間ランキングを2位まで伸ばした小林は、「2016年は久しぶりに海外でも思い切り戦ってきたいと思います」と力強く語ってくれた。

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シーズン後半に充実したプレーを見せた小林英明


今年、日本勢は『アジア選手権』『ワールドカップ』『世界選手権』などの国際試合に度々参戦していたが、芳しい成績は挙げられなかった。海外戦出場が多くなるであろうランキングの2トップ、梅田と小林を始めとする日本上位勢には発奮を期待したいところだ。

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さすがの安定感で今年も女子戦線を牽引した肥田緒里恵


2015年の女子戦線に目を転じると、なんといっても、『全日本女子3C選手権』(10月)で14度目の優勝を果たした肥田緒里恵の安定度が光っていた。肥田は夏頃までは「どうも本調子に戻れなくて」と語っていたが、7月にアメリカで行われた『ジェニファー・シム国際』で3位、8月の国内戦、『レディース3Cオープン』で優勝と、尻上がりに状態を上げていった。来年は2年に一度の『女子世界選手権』イヤーでもある(韓国開催)。2014年大会で優勝した現役世界チャンピオンのテレーズ・クロンペンハウアー(オランダ)の強さは抜きん出ている。しかし、肥田・東内那津未という2名の世界チャンピオンを擁する「女子3C強国」の日本勢がどのような結果を持ち帰るのか。その前の日本代表選考会も含めて興味は尽きない。 

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