WEB CUE'Sトップ > 過去のニュース(2014年) > 裏切らない努力、記録の裏付け

過去のニュース(2014年)

2014.09.15 トーナメント

裏切らない努力、記録の裏付け

2014東海レディスグランプリから

14tokai_banking.jpg

ファイナル・梶谷景美vs河原千尋のバンキング

全身全霊を懸けてぶつかる梶谷景美河原千尋。それを我が試合のように誰よりも熱心に食い入るように見つめる栗林美幸の姿。昨日行われた『東海グランプリ』の決勝戦で見た絵は、時代を巻き戻したような懐かしさを感じさせる風景だった。

様々な記録が懸った昨日。準決勝で河原に敗れた夕川景子が、今シーズン8試合全てでベスト8入りを果たしているという記録を更新し、今季の準決勝進出率(以下、準出率)を75%まで伸ばした。このアベレージで見る準出率は次点に付ける河原が63%、続く栗林が50%であることから、今年の夕川がいかに安定しているかを如実に示す数字だろう。

14tokai_yukawa.jpg

プロ達が激しくせめぎ合う中での、夕川の75%という数字は見事

そんな夕川を脇役へと追い立てているのは、やはり優勝率50%の河原に決勝戦進出率50%の栗林、そして河原と栗林がタイトルを独占する状況に大きな重圧を感じながら、自らそこへ斬り込んでタイトルを奪取した梶谷の3人に他ならない。現に梶谷は昨日の優勝直後に何度も何度も拳を握り、記者団に対して「今回は1年空きませんでしたね」と、昨年11月の全日本選手権を獲って以来、タイトルから離れていたことを強く意識していたと窺えるコメントを出した。

14tokai_hyousho.jpg

喜びを表に出す表彰式での梶谷

一方、日ごろ静かに踏ん張る梶谷が、あれほど我武者羅さを表に出して戦った決勝戦も珍しい。それと同時に、ゲームボールを沈めた梶谷に対して歩み寄り、握手をした河原が見せた笑顔も咲き誇るほどに美しいものだった。それが数少ない敗因を自分の中に見付けた満足感なのか、プレッシャーの中で踏ん張り切った先輩への敬意なのかは定かでないが、河原が既に目先の勝敗ではなく、大きな自信と目標を持って力強く次なるステップを歩んでいることの証明だと映った。

そして栗林。決勝戦を見つめる彼女は、まるで日本代表の試合を見守る鬼監督のような眼差しだった。終了後に声をかけると「自分がまだまだだと感じた」、「また1つ思い出させてくれましたね」と、決意漲る頼もしい表情で語ってくれた。「次の北陸はやはり自分が?」という質問を投げると、「そうなれるよう練習をしてきます」と短い返事が返ってきた。栗林の今年の復活劇は周知の通りだが、彼女には10年を超えるプロ生活の中で幾多もの壁を自身の努力で打ち破ってきた実績があり、更なる上振れの気配を十分に漂わせている。

14tokai_kuribayashi.jpg

真剣にテーブルを見つめる栗林美幸の眼光は、試合時のそれと変わらない

今回、4人の上位陣の名を挙げたが、それぞれがこの土日で得た経験値もまた絶大なものであったに違いない。既にプロ公式戦20勝をマークしつつ台湾で単身修行を重ねる河原の更なる独走の加速も予想される。そして梶谷と河原の決勝戦を栗林や夕川が見る姿も、5年前には既に見かけていたものだ。結果を出すには現実を踏まえた上で重ねる工夫と努力以外に方法はない。ハイレベルでそれを実践し続けるトップグループが更に後方との差を広げているのではないかと感じる週末だった。突き抜けるニューファイターの登場が待たれる。

Akira TAKATA