WEB CUE'Sトップ > 過去のニュース(2013年) > 土方隼斗スタイル第2章へ

過去のニュース(2013年)

2013.04.02 プレイヤー

土方隼斗スタイル第2章へ

Player Pick up  土方隼斗
王者に向け好発進したオトナのハヤト

先の『関西オープン』を制した土方隼斗。本誌でも長年にわたって人気コーナーとして連載してきた『土方隼斗STYLE』という企画がちょうど明後日発売の5月号で最終回を迎える。記者はコーナー担当ではないため番外編となるが、今回の優勝に感動した1人として彼について記してみたい。

13kansai_hijikata.jpg

技術面で総合力を高めた今、持ち味の美しいストロークも一層冴えわたる

この日の土方は、ベスト8で大井直幸を9-2と圧倒すると、準決勝では羅立文を相手に4-7のビハインドから渾身の大マクリを決めて9-8のスコアで決勝戦進出を果たした。相手は昨年の覇者であり、2003年の世界選手権をはじめ世界のビッグタイトルを数多く保持するスーパースター、アレックス・パグラヤン(カナダ、フィリピン)。準決勝では赤狩山幸男を相手にほぼパーフェクトなゲームで勝ち上がってきていた。

このファイナルでは土方が5連取して6-4と逆転するも、そこからパグラヤンが4連取を決めて一気にリーチ。しかし大人のハヤトは土壇場で魅せる。この第15ラック目からラストまでは、特に観ていただきたいスリリングなものに。会場内でも多くのギャラリーが勝敗を超えたところで「もっと見ていたい」と思ったに違いなく、その想いは1人1人が自然と拍手をする手に力が入っていたことでも感じ取れた。

13kansai_otona.jpg

試合中の表情に余裕が見てとれる。オトナのハヤト、自然体が頼もしい

それは余裕綽々のパグラヤンと比べてもなんら遜色のない土方の表情にも起因していただろうし、何より上手さと強さと頼もしさと三拍子を纏った若き"エース"に感動と興奮を覚えたことは間違いない。落ち着いた様。爽やかな笑顔。良い流れも不運も受け入れる姿。いよいよ土方隼斗が次のステージに踏み出したのだと、私は現場でそう感じた。

「オープン戦で勝てなくてプレッシャーもありましたが、今年から試合を楽しもうと思いました」そんなコメント通りに自然体で臨んだ試合は、土方の魅力を存分に引き出して、ファンを魅了することに。今回、彼が見せたものは、言葉通りに『楽しむ姿』で、それは誰のコピーでもなく、彼にしかできない、まさしく『ハヤト・スタイル』だった。冒頭に記した連載の卒業式であるかのように。

トーナメントでは"最強"や"伝説"の猛者たちが集い、その中で優勝できるのはたった一人。だが、プレーで魅せることや感動を与えることは全員が可能性を有している。それがプロ中のプロの仕事であり、もしかすると観るの者が持つ過ぎたる欲なのかもしれない。でもオトナのハヤトは期待の何倍ものパフォーマンスで応えてくれた。

13kansai_ok.jpg

OKが出たゲームボールの配置と爽やかに白い歯を見せるファイナリスト達

ファイナルに話を戻すと、遂に8-8のスコアに追いついた土方。場内のアナウンスがフルゲームになったことを伝え、両者へ拍手をうながす言葉が流れると、ラックを組む手を迷わず止めて、パグラヤンと握手を交わした。そしてブレイク。ナイスヒットで的球は3個イン。配置もノープロブレム。途中、ポジショニングに関して笑みを浮かべるシーンもあったが、最後は10番へピタリと出したところでパグラヤンがOKを出してゲームセットに。

13kansai_gyaku.jpg

いつか逆の絵が見られるかもしれない。いざ世界のトップスターへ一直線だ

オトナのハヤト。彼のプロキャリアにおいては、まだ序盤の域なのかもしれないが、もう日本の守護神というポジションにシフトチェンジをしたと感じた。いよいよ世界獲りにも期待が高まる。
Akira TAKATA