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2013.02.24 その他

タップ制作の現場

製品完成までの苦労と品質の追求

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工房にはREI TIPの藍色の新タップが並ぶ

タップメーカーとして近年人気上昇中の『REI TIP』の工房を訪れ、製品の制作秘話を伺った。国内で新たに発売するタップ『雅』『極』を例に、その行程などを「REI TIP」開発者の堀内良太郎氏と『第16回アジア競技大会』スリークッション金メダリストの鈴木剛プロ(JPBF)に語ってもらっている。「極」は鈴木プロ、「雅」はポケットビリヤードの田中雅明プロ(JPBA)監修したモデルだ。
※註:ポケット用、スリークッション用それぞれに「雅」「極」が作られている。

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左から『極』監修の鈴木剛プロ、『雅』監修の田中雅明プロ

実はこのタップ、国内ではこれから本格的に販売していくのだが、海外では先行発売して好評を得ているものである。ただし、同社ではタップ制作の全てを手作業で行っているため、ポケット用は生産が追い付けないことを考慮し、現在のところ国内では一部のビリヤード店などを除き、広く流通させる計画はないという。製品の品質を維持するためにも、泣く泣くの決断だったようだ。

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『極』

「雅」と「極」の開発には3年の歳月を要し、その間には数えきれないほどの試作品を作ってきた。別の製品なども含め、「道具を使いこなすプロ」と「作るプロ」が意見を交わし合って完成を目指すため、良いタップを作りたいという想いから、時には衝突するようなことだってあるという。

今回「極」を作るにあたって鈴木プロがこだわったのが打感や耐久性はもちろんのこと、タップの色にも注文を付けた。その表情は陶器の『伊万里焼き』などを思わせるような鮮やかな藍色。

「構えるとどうしてもタップは目に入ってくるので、視覚的な要素も実は大事だったりするんですよ。ツヤが良かったり、タップの顔がいいとプレイヤーとしてモノ自体に信頼を置けるんです。個人差はあるけどみんなある程度タップに気がいってるんで、そこは重視しました」(鈴木プロ談。以下同)

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REI TIP・堀内氏とタップについて語り合う鈴木プロ

積層についても「プロや競技としてビリヤードに取り組んでいる人には、タップを交換した時にすぐに交換前の性能で撞けることが大事。積層タップのメリットとして層が増えるほど個体差が出にくいという部分があると思うんですが、その分革で撞いている感触が薄れてしまうんですね。個体差なく、革の感触も大事にしたいということで最終的には5層になりました」と語る。

また、制作過程のやり取りについて「打感、耐久性、見た目の3つの要素を絶対に兼ね備えていないといけないということで、REI TIPさんには何度も無理な注文をしたと思ってます。僕らプロは革の専門的な知識はないので、出来たものを撞いて感想を述べるぐらいのことしかできません。なので、出来上がった試作品になるべく具体的な感想を伝え、それを繰り返し、試作品と僕の望む完成品との誤差を埋めていきました」と完成までの3年間の経緯を振り返る。

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『雅』

堀内氏は「鈴木プロとの間にはなかったんですけど、アドバイザーによってはなかなかOKが出なかったりして、あとで試作品全部ぶちまけて感情をあらわにすることもあるんですよ(笑)。作業が終わったら朝だったりとかするんです」と、笑顔と共に制作の苦労を明かした。

なお、キャロム用のタップの国内の売り上げは全額を、JPBFを通して今後の大会の賞金に充てることになっているという。ビリヤード業界に限らず、誰にでもできるような行為ではないのだが、堀内氏は「プロとして活躍する選手の地位向上に貢献したい」との思いから売上金を賞金へ充てたいと考えたそうだ。

キャロム用の『極』と『雅』については下記で確認できる。


また、鈴木剛プロのお店『Billiard cafe Roots』でも購入が可能だ。