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過去のニュース(2012年)

2012.12.26 トーナメント

アジアの時代

2012プレーバック・ワールド

世界を見渡しシーズンを振り返るならば、男子は張榮麟(ジャン・ロンリン/台湾)がワールドトッププレイヤーとしての地位を確固たるものとした1年だった。そして、アジアの強さが改めて強調されたシーズンだったとも言っていい。

張榮麟は世界選手権の12年シーズン開幕戦『エイトボール世界選手権』に優勝し、WPAランキング対象試合の最終戦でもある『全日本選手権』でも優勝。世界で2度勝利を収めれば、シーズンランキング1位は誰しもが納得するところ。加えて台湾チームとして参戦した『世界国別対抗チーム戦』でも、決勝で日本を敗って優勝している。

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世界ランク1位・張榮麟


ランキングトップ10(内7名がアジア圏)に目を移すと、その大半に共通するのが、ランキング対象試合において、1度以上の3位タイを収めている点。これを満たさずにその中に入ったのは柯秉逸(カー・ピンイー/台湾)、トーステン・ホーマン(ドイツ)の2名。彼らがそこに位置できるだけの実力者であることはここで細かく説明するまでもないだろう。

女子はアジアン旋風真っただ中と言ったシーズンだった。女子世界ランキングでこそ、1位はケリー・フィッシャー(イギリス)に空け渡したものの、上位10名はほか全てアジア圏(中国、韓国、台湾の選手ら)。20位まで範囲を広めても、欧米選手は13位のジャスミン・オーシャン(オーストリア)が加わるだけだ。

トップ20中の中国、韓国、台湾以外の選手はK・フィッシャー、オーシャンに加え19位のルビレン・アミット(フィリピン)、20位の河原千尋のみ。ただし、アジア優勢の中で、『女子ナインボール世界選手権』と『チャイナオープン』で優勝したK・フィッシャーの首位に非の打ち所がないのも事実。来季はアジア勢によるK・フィッシャー包囲網がより強固なものとなることが予想される。

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K・フィッシャーがアジア勢を制してトップの座に


興味深かったのが女子の世界戦初戦(『アムウェイ・オープン』)を制した周婕妤(チョウ・ジェイユー/台湾/ランキング6位)が、男子同様に全日本(女子はWPAランキング対象外)も制したこと。年間というスパンでのシーズンの戦い方、コンディションの調整法に台湾独自の方法でもあるのだろうか。

本場、アメリカの選手の活躍が少なかったのは少し残念だが、ビリヤードに限らず、この国のスポーツは国内で完結するものが多く、実際にかの地で行われた『USオープン』ではシェーン・バン・ボーニング(アメリカ)が優勝し、近年欧州へ渡っていたタイトルを取り戻すことに成功。ジョニー・アーチャーをはじめ、有名選手も健在をアピールしていた。未だ、アメリカが強国であることに変わりはない。

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S・V・ボーニングがUSオープンではタイトルをアメリカに取り戻した


さて、世界における日本勢の1年を振り返ると、昨年よりは下がってしまったものの、ランキング8位に名を連ねた赤狩山幸男の存在は日本人としてなんとも頼もしい。もちろん、国際大会3位以内という共通点もクリア済みだ(チャイナオープン3位タイ)。18位に甘んじることになった大井直幸も、『ナインボール世界選手権』で3位タイを獲得。参戦数が多ければ順位はもっと上だっただろう。

女子は日本勢がアジアン旋風の中心にいるとは"現時点ではまだ"言えない。ただ、これまでにも世界で戦い続けてきた梶谷景美・河原に加え、今年勝ち方を覚えた木村真紀や好調の曽根恭子らは、見る者に翌シーズンの大暴れを期待させるパフォーマンスを披露していた。来季は大いに期待が持てる。

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世界における日本の代表格・赤狩山幸男


新シーズンは男子が2月、女子が3月にそれぞれエイトボール世界選手権、アムウェイ・オープンが予定されている。今年の張榮麟と周婕妤が示した通り、シーズンの入り方は1年間を戦い抜く上で非常に重要なもの。

新シーズンが待ち遠しいばかりだが、初戦へ向け、オフ期間に選手達が最高の準備をしているのであれば、ビリヤードファンはその水準に合わせた「ビリヤードを見る目」と「知識」を養う期間とこの時期を位置付けてもいいのかもしれない。