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過去のニュース(2012年)

2012.09.19 プレイヤー

確率を超えた"何か"とは!?

Player Pick UP マスター・オブ・マスターズ 持永隼史

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持永隼史が3連覇!!


JAPAマスターズで3連覇を達成した持永隼史。これがどれほどの偉業であるか、そして持永がそれを成し遂げた要因を、少し掘り下げて検証してみたい。

仮に参加者の実力がすべて同じだとすれば、優勝する確率は64名のトーナメントで1.56%で、2連続の優勝は0.02%となる。もちろん、選手たちはこの可能性を高めるべく日々の練習を重ねているのだから、こんな確率論は暴論であり、実際には当てはまらないのだが。

参考までに過去にアマチュアの全国大会で連覇を達成したのは、近年では嶋野聖大(現JPBA)が'08〜'09に『全日本ポケットビリヤードUSナインボール大会(スポレク記念大会)』を、また田中雅明(現JPBA)は同大会で'97〜'99の3連覇を達成している。そして『全日本アマチュアナインボール選手権大会(通称:アマナイン)』で'01〜'02に久田康敬(現JPBA)が、このマスターズでも西嶋大策(同)が'00〜'01に、それぞれ大会2連覇の記録を残している。
※防衛戦の形式を採用している『名人戦』と『球聖戦』は省いています

ただし冒頭で示した『確率』は『2回(3回)の出場で2回(3回)とも優勝する確率』であって、『昨年優勝した人が今年も勝つ確率』は実は1.56%に変わりはない。そして『優勝者がその後2年連続で優勝する確率』、つまり大会3連覇を果たすことができるのはチャンピオン5000人に1人、ほぼ不可能だという計算が成り立つ。すると前出の田中、今回の持永、揃って確率を遥かに凌ぐ『強さ』を示したことになる。

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ブレイクの出来が好結果に繋がった


ビリヤードは勝敗に運勢の要素が関わりやすく、実力通りの結果とならないケースも多い競技。しかし、相手の『実績』や『雰囲気』にのまれてミスを誘発するのもビリヤード。持永に限らず優勝者は必ず、「負けていたハズの試合」の1つや2つを拾っているもの。そして、次のゲームまでに素早く気持ちをリセットする能力と、それを冷静に見極めて練習にフィードバックさせる姿勢が常勝への道。

持永はアマチュアにして突出したその嗅覚を備えている。これは名人の肩書きを長年にわたって背負った中で身に付けたもの。そしてテンボールを制するカギはブレイク。今回の2日間に限れば、その点が持永の勝率アップに寄与していたと感じとれた。

事実、ベスト8ではワンチャンスから一気に5点を加点する爆発力を披露。全国大会のレベルとはいえ、テンボールでこれを成すにはブレイクのイン率と取り出しの形を安定させられなければ不可能な業。

試合が終わって一言「またタイトル(を保持する状況)をギリギリつなげました。よっぽど運がいいですね」とホッとした表情を浮かべた持永。「ちょっと運がなければ負けてた試合ばかりでした」というコメントはビリヤードの本質を理解している様子が伝わってくる。

持永が島根から東京へ出て半年。「最近はJPAでよい経験をさせてもらっています。そしてお店(ミスタースポーツマン 中延店・品川区)では一緒に練習する相手にも恵まれて、身近なプロ(田仲海輝・JPBA)が苦しくても人に見せることなく努力をしている姿に励まされています」と環境もよさそうだ。

ここから1年。さらに確率論を乗り越えてくる期待を抱かせてくれる。マスター・オブ・マスターズ。持永が偉業を達成した様子はCBNTでも放送予定なので、ぜひその目で確認していただきたい。