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Chapter12 闇と光

2021.01.07
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作/Donato La Bella 文/渡部嵩大 監修/関浩一

第12話

道場では翔と龍が明の前に座り込み、依然として互いに一歩も譲らない状況が続いていた。お願いがあると神妙な面持ちで2人が明のもとを訪れてからはもう随分と時間が経った。日は傾き始め、低いところを灰色の雲が覆っていた。エレメントのその先を教えてほしいという願いを聞き入れるつもりのない明は、2人に立ち上がるよう促すが、彼らもまるで聞く耳をもたなかった。まだ子どもである彼らの意思の固さに内心驚いていた明ではあった。しかし、断固として譲る訳にはいかなかった。

「お前達はまだ幼いから、精神を蝕まれる恐ろしさをわかっていない。この私を感心させるほど、ビリヤードの高みを目指す雷の姿勢は真剣そのものだった。その強い意志をもってしてもエレメントの秘める力の前には無力なのだ。弟子を1人のみならず、2人も3人も過った方向へとみすみす進ませるなど、断じて許されない。愚かなことを言うのはいい加減やめにしなさい」

雷と同じエレメントを持つ龍は、明がエレメントの更なる段階を伝授することを渋る理由が痛いほどよくわかった。

「火のエレメントを持つ人が、力を手に入れたいという気持ちを人一倍持っていることはわかっているし、俺にはちゃんと自覚もある。だからといって、いや、だからこそ、力を求めて道を踏み外すなんてことを俺は絶対にしない。隣にはいつも翔がいる。翔と2人なら必ず正しい道を進んでみせる!」

一切諦めていない翔もそれに続く。

「雷はビリヤードに真剣になりすぎて、自分が強くなることしか見えなくなったんだ。でも俺達は違う。俺達がエレメントを磨きたいのは自分のためじゃない。雷に手も足も出ない今のレベルじゃ話にならないことはわかっている。だからこれまで以上に練習していつか必ず雷を取り戻してみせる! 今まで自由な風のように生きてきたけど、目指す方向、頑張る理由がちゃんと見付かったんだ。嵐を吹き飛ばすほどの風に俺はなる。だからお願いします、エレメントの全てを教えてください!」

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明は上手い言葉が見付からず、庭へと続く障子を開け放ち、外を眺めた。偽りのない2人の言葉とどこまでも真っ直ぐなその視線に、本当は随分と前から自分の意思が揺らいでいることに彼は気付いていた。破滅への道を示す訳にはいかないと言い聞かせる自分とは別に、生まれた瞬間から成長を見届けてきた雷のことを諦めきれるはずがないもう1人の自分がいた。

──────彼らを信じても良いだろうか。

その時、雲間から一条の光が部屋に差し込んだ。ハッと部屋を振り返ると、そこには揺るぎない意志を讃えた、2人の金色の表情があった。明はもう、自分の本心を否定することはできないのだと悟った。再び外を向き、空を見上げると、明は静かに言った。

「……いいだろう。明日の夜明けに、道場で会おう。」

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交互ブレイクの試合にも関わらず、雷は初戦を8-0のストレートで試合を終わらせると、その後の相手にも1ゲームも取らせることなく1日を終えた。雷の放つあまりのオーラに圧倒されてか、試合後に起きるのはいつも拍手というよりもざわめきだった。同じく1日目を勝ち抜いた雫とケヴィンも雷の試合を観戦していた。その帰り道、2人は雷について話し合っていた。

「あんな試合は初めて観た。私たちがエレメントを使う時はゾーンに入って自分の力を最大限引き出せるようになるけど、鷹上雷の力は自分だけに留まらず、周りにも影響をまき散らすみたいだね」

「ああ、そうだな。どうやら昔先生が話していた、エレメントの先の段階ってやつみたいだ。ただ、よくわからないが、俺達が使うエレメントをそのまま磨いたようなものには思えなかったな。得体の知れない別の何かといったところだ」

2人がゆっくり歩いていると、突然背後に寒気を感じた。振り返ると、さきほどまで試合をしていた鷹上雷がこちらに向かって歩いてくるところだった。

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「お前らが師と仰ぐ奴は我が鷹上家からエレメントの知恵を盗み、あろうことか赤の他人の、それも弱者にその術を引き継ごうとしている。全く吐き気のする話だ。お前らにはわかるまいが、先ほどの試合、あんなものは肩慣らしに過ぎない。お前らはエレメントの『エ』の字程度なら知っているようだが、それならばこの力が見えるかもしれないな」

わずかに口角を上げた雷の後ろには黒い影が渦巻き、目は闇に染まり、影は鬼の形をとった。

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